1924 – 9.5mm 『二少年によるフランス周遊記』(ルイ・ド・カルボナ監督)

「9.5ミリ 劇映画」より


或る夜、ジユリアンとアンドレ兄弟は闇に乗じてファルスブールの孤児院を抜け出した。亡き父の遺言を果たすため叔父が住む南仏マルセイユへ向かつたのである。父の旧友の助けもあり、二人は無事国境を越えフランスに辿りつくことができた。手持ちの路銀は乏しく、兄弟は徒歩で南下を始めた。

道中では多くの人々に助けてもらう。エピナルの町では宿屋の亭主夫婦に可愛がられ、ジユリアンは錠前屋の修業をし、アンドレは学校で勉強させてもらう。しかし長居は出来なかった。一ヶ月の休息の後に二人は再度旅に出た。ブドウ作りの盛期を迎えたブルゴーニユ、工業の町クレルモン・フェラン、宗教建築の立ち並ぶアヴイニヨンを経由してプロヴァンスに入つていく。

マルセイユまで六十里となつた所で南仏の強風に煽られアンドレが足に怪我を負った。ジユリアンはルートを汽車に切替え、弟を背負つて客車に乗りこんだ。マルセイユに辿りつくも、折あしく叔父はボルドーに長期滞在中とのこと。肩を落とした兄弟を見てマルセイユっ子たちが一肌脱ぐ。港町で船主に話をつけ、運河を使いボルドーまで送つてもらう話になった。

ボルドーで叔父と再会。事情を知つた叔父は二人を養子にしようと決める。手続きの爲に孤児院へ戻らなくてはならない。ダンケルクまで船で移動して汽車でファルスブールへ。父の墓参りを済ませ役所へ向かう。交付されたのはフランス国籍を証明する書類であつた。晴れてフランス市民となつた兄弟は叔父の親友ギヨーム氏一家の元に身を寄せ、幸せに暮らしたのであつた。


『二少年によるフランス周遊記』は19世紀後半に出版された児童向けの物語です。第二次大戦前のフランスでは国語の読本として使われており当時の人に馴染み深い内容でした。1924年公開の映画版は3時間を越える大部なもので、パテベビー9.5ミリ版は前後半の二部構成とし40分程度まで切り詰めています。

主人公を演じているのはいずれも映画出演経験のない素人の子供さん。お兄さんのジュリアン役に素朴と端整さを兼ね備えたリュシアン・ルゲイ君。弟アンドレ役は天然パーマに笑顔が可愛らしいグレゴワール・ウィリ君でした。

父の遺言を果たすため貧しい兄弟が叔父のもとへ徒歩で向かう設定を口実に、様々な町の産業や文化が紹介されていきます。地理の勉強に役立つだけではなく北極星を見つけて方角を割り出したり、当時最新技術だった写真の話が出てくるなど教養ネタも多く含まれています。

同時期に公開された『狼の奇跡』(レイモン・ベルナール監督)の大衆受けを狙ったスペクタクル性はなく、エプスタイン(『蒙古の獅子』)らのインテリ受けする表現とも違っていて、話題となることのないまま埋もれてしまった一作ではありました。それでも各地の風景や産物を現地ロケで記録した功績は大きく、ナチュラルな演技も相まって好感度の高い作品に仕上がっています。


[IMDb]
Le tour de France par deux enfants

[公開年]
1924年

[メーカー]
仏パテ社

[メーカー記号]
2010(前編6巻)& 2012(後編6巻)

[9.5ミリ版発売年]
1925年

[フォーマット]
9.5mm 無声 10m×12巻 ノッチ有

1920年代 仏パテ社「パテオラマ」(携帯用35ミリフィルムビューワー、小型幻灯機)

1920s-patheorama-bakelite01 1920年代に市販されていたハンディサイズの35ミリフィルムビューワー。ポータブル式の幻灯機と見ることもできます。
1920s-patheorama-bakelite051920s-patheorama-bakelite08
側面の蓋を開いてフィルムを装着。正面の大きなレンズを見ながら光にかざすと拡大した静止画を見ることができます。パテ社はこのパテオラマ自体を組みこめる幻灯機「ココリコ」を同時発売していました。アダプターにパテオラマを置いて幻灯機に火を灯すと壁に画像が投影できるシステムでした。

パテオラマはベークライト製で、黒いフラットなデザインの廉価版が多く普及していました。手元にある機種はエンボス処理が施された上位機。デザインや色遣いに19世紀末アールヌーボー的な要素を見てとることができます。

フィルムは6本セットで売られていたようです。

1932年 仏パテ社 映写機・撮影機および周辺機器カタログ&定価表

pathe-baby-tarif-general-france01pathe-baby-tarif-general-france02左列にカタログナンバー、中央列に商品名と簡易スペック、右列に旧フランでの価格。

1ページ目に映写機とスクリーン、2ページ目に周辺機器、3~4ページ目に自家現像用の商品と続いていきます。当時のパテベビー映写機の価格は約600旧フランでした。これは現在の金額に換算すると5万2千円強(400ユーロ弱)に相当するそうです。

金額だけ見るとそんなものかとも思いますが、労働者の平均時給が3.19旧フラン(280円程度)、朝刊を0.3旧フラン(約26円)で買えた時代の話ですのでやはり高価なものだった様子がうかがえます。

1930年代初頭 日本 パテベビー映写機 チラシ

二つ折り見開き4ページ、出版社名明記なし。パテベビー映写機、キッド、リュクスの3台を中心としたラインナップで1932年前後と思われます。ベビー映写機75円、キッド映写機が29円、リュクス映写機が165円、手回し式カメラ(レンズF=3.5)45円、モトカメラ115円の価格設定となっています。

仏パテ社 パテベビー映写機 メンテナンスキット

1920s - Pathé Baby nécessaire d'entretien
1920年代 パテベビー映写機メンテナンスキット
パテベビー映写機のクリーニングやメンテナンスに必要な道具一式をまとめたもの。

1)マイナスドライバー
2)埃を除去ための筆
3)シャモア革のクロス
4)真鍮製のオイル差し
5)象牙製と思われるヘラ

5つの道具が含まれています(クロスは箱にしまったまま)。当初は紙製の箱入りで後に金属製の缶入りに変更されました。パテ社の製品カタログではカタログ番号F20が振られています(価格は15旧フラン)。

仏パテ社製 金属製スプライサー

Pathe 9.5mm film colleuse
仏パテ社製 金属製フィルムスプライサー
木製の土台を持つ純正スプライサーよりやや後年のもの。スプライシングの際、フィルムのずれを防ぐため3か所で固定する仕様になっています。 40年代になると角ばったデザインの後継機が使われるようになりました。

1929 – 9.5mm 『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』 (マルコ・ド・ガスティーヌ、仏パテ社4リール版)

「『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』[La Merveilleuse vie de Jeanne D’Arc, 1929]」
& 「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

9.5mm La Vie merveilleuse de Jeanne D'Arc (1929)
La Vie merveilleuse de Jeanne D’Arc
(1930s French Pathé 4339)

1995年の仏VHS版、1930年代前半の英9.5ミリ版2巻物に続き、30年代仏9.5ミリ4巻物を手に入れることができました。全体の映写時間は約50分で、劇場公開版の半分弱をカバーしています。


英パテスコープ社版より尺に余裕があるため、周辺エピソードまで収録されており映画の全体像にかなり近づいています。VHS版、ゴーモン・パテ・アーカイヴで以前に公開されていた35ミリ琥珀染色版(VHSと同一ソース)と画質を比べてみましょう。

1)生まれ故郷の村で従軍兵士の話に耳を傾けるジャンヌ


2)ジルドレが自分を王と偽ってジャンヌを試そうとする一幕より

左から順に9.5ミリ版、仏ルネ・シャトー社VHS版、パテ社所蔵35ミリ琥珀染色リストア版

VHS版(中央)はパテ社所蔵の35ミリ版(琥珀染色版、右端)を白黒に変えただけでアングルや流れに変更は加えておりません。一方の9.5ミリ版では人物が大きく映るようトリミングが施されています。1)の例で手前の袖の部分がカットされるなど全体の構図が大きく変わるアレンジの様相を呈しています。

リストア版は非常に美しい琥珀色をしています。35ミリと9.5ミリとでは面積比で15倍ほどの差があって、情報量としては35ミリ版に圧倒的な軍配。9.5ミリでは粒子感が残ってしまっていますよね。ただし35ミリ版の方は室内撮影、スタジオ撮影の場面で暗い部分が黒飛びしており、ディテールが潰れてしまっています。2)のジルドレのアクセサリーや衣装デザインを比べると9.5ミリの再現力も捨てたものではないのかな、と。

もう一つ重要な指摘としてVHS版と35ミリ修復版は人の面立ちがややほっそりしています。9.5ミリ版とアスペクト比の圧縮が微妙に異なっているのです。他の場面も同様で、どうやらデジタルリストア版では左右の比がやや圧縮されているのではないかと考えています。

genevois-sample01s
9.5ミリ版の横幅を8%縮めたもの
genevois-sample02
デジタルリストア版を黄色枠でトリミングしグレースケール変換

9.5ミリ版画像の縦サイズを変えず、横サイズを8%ほど縮めると修復版と同じ感じになりました。

[タイトル]
La Vie merveilleuse de Jeanne D’Arc

[原題]
La Merveilleuse vie de Jeanne D’Arc

[製作年]
1929年

[IMDB]
tt0020165

[メーカー]
仏パテ社

[メーカー記号]
4339

[9.5ミリ版発売年]
1934年

[フォーマット]
9.5mm、無声、白黒、4リール(480m、約50分)、ノッチ無

1929 – 9.5mm 『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』 (マルコ・ド・ガスティーヌ、英パテスコープ社2リール版)

「『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』[La Merveilleuse vie de Jeanne D’Arc, 1929]」
& 「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

1929 - La Merveilleuse vie de Jeanne D'Arc (UK Pathescope SB791)
Saint Joan the Maid (La Merveilleuse vie de Jeanne D’Arc)
1930s UK Pathescope Version

『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』は1929年の初公開後、確認できた限り少なくとも4度ソフト化されています。

1) 1934年・英パテスコープ社 9.5mm2リール版
2) 1934年・仏パテ社 9.5mm4リール版
3) 1930年代・仏パテ社 17.5mmパテールーラル版
4) 1990年代・ルネ・シャトー社 VHS版

いずれも現時点では入手しにくくなっておりますが、比較的市場に出てきやすいのがこちらの英パテスコープ社版です。

長さは24分程。第1リールは戦乱続くフランスで聖女のお告げを聞いたジャンヌが立ち上がり、オルレアンを解放し仏軍を勝利に導くまで、後半第2リールは戴冠式に始まり、見方の裏切りによって英軍に捕らえられたジャンヌが火刑に処されるまでを収めています。

9.5ミリ版はトリミング幅を大きく取り、登場人物が大きく映る様にアレンジされています。センターホールの位置関係で、実際に映写すると上下がさらにトリミングされ場面によって人の頭が画面からはみ出してしまう傾向が見て取れます。

一方ではスタジオ撮影や室内撮影の場面も明るめに映っていて、パテ社による35ミリ修復版より鮮やかな映像が画面に映し出されたりもします。

[タイトル]
Saint Joan the Maid

[原題]
La Merveilleuse Vie de Jeanne D’Arc

[公開]
1929年

[IMDb]
tt0020165

[メーカー]
英パテスコープ社

[カタログ番号]
SB791

[フォーマット]
9.5mm、無声、白黒、2リール(240m、約25分)、ノッチ無

1919 – 9.5mm 『百萬長者の娘ッ子』(ジョージ・アーチェインバウド監督、米)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

1919 - A Damsel in Distress 00

マルジヨリイは氣まぐれな不思議な而して可愛いゝはすつぱな小娘でありました。それでこの娘の理想する男は今様の火の神様で鍛冶屋場の烈しい爐の上にある晩彼女に現はれたのであります。所が或る日、兄の監視を逃れるため、彼女は自動車の中へ輕率にも飛び込みました。と、其處には彼女を喜んだ顔つきで眺めてゐる一人の若い男が居りました。。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

1910年代の雑誌で時々姿を見かける女優さんにジューン・キャプリスがいます。彼女が仏パテ社と契約を結んで主演した作品が『百萬長者の娘ッ子(ダムゼル・イン・ディストレス)』でした。

お金持ちのお嬢様が偶然出会った美青年と繰り広げる軽めの恋愛劇は(当時パテ社のスタジオがあった)ニューヨークでのロケ撮影。乗用車、タクシー、街並み、ファッションや髪型など時代の雰囲気を満喫できる作品となっています。

[タイトル]
Mam’zelle Milliard

[原題]
A Damsel in Distress

[製作年]
1919年

[IMDB]
tt0010042

[メーカー]
仏パテ社

[仏パテ社カタログ番号]
739

[字幕]
仏語

[フォーマット]
9.5mm 10メートル×6本 仏語字幕 12476フレーム(約15分)

1912年 – 9.5mm 『液體空氣の實驗』(仏パテ社/伴野商店)

「9.5ミリ動画 05c 伴野商店」より

壓搾機械の方法で零度以下二〇〇〇度に冷却すると空氣は液體となります。而してその状態に於てそれは不思議な特質を所有します。パテー ベビーはこゝに思實に映寫して甚だ興味あるその多くの實驗を明かにお目にかけます。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

伴野商店のカタログで189番として紹介されたフィルムで、1920年代中盤に仏パテ社で市販された動画に日本語字幕を付け直したもの。初出はさらに古く、1912年に「科学入門シリーズ」の一貫として公開された記録が残っています。

l-air-liquide05.jpg

カイゼル髭の男性が液体空気の作り方やその特性を紹介していきます。「有害ではありません」と管に口を近づけそのまま飲んでしまうなど科学物としてはなかなかワイルドな展開も含んでいます。

1912-06-08-cine-journal-l-air-liquide
1912年6月8日付の仏シネ・ジュルナル誌より
「液体空気(L’air liquide)」の文字が見えます

1912年は映画業界が軌道に乗った直後の時期ですでに多くの製作会社が勃興し多様なコンテンツを提供していました。ドラマだけではなく、地誌や科学も素材とされ毎週のように各社が新作を提供していたのです。

結果として、1912~14年の製作となる短編ドキュメンタリーが相当数残されました。1920年代中盤に仏パテ社が9.5ミリソフトの市販化に取りかかった時、この時期の動画が復刻の対象となりました。先日デジタル化した『消えゆく民 アイヌの人々』(1912年)も同じ流れで製作~公開~ソフト化された一本です。

[タイトル]
液體空氣の實驗

[原題]
L’Air liquide et les applications du froid intense, série instructive

[メーカー]
伴野商店

[仏パテ社版カタログ番号]
74

[フォーマット]
10m(ノッチ有)

1912- 9.5mm 『ナピエルコウスカ嬢のカンボジア風舞踏』(1912年)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

1912 9.5mm Napierkowska : Danses Cambodgiennes

ギリシヤの彫像のやうにすらつりつとした姿整で、華やかな衣装をつけてゆつたりとした態度の中に人をひきつけるその踊り子は、カンボチヤンダンスの不思議な現はれであります。中にも一座のスターは他のきらく數多の踊り子眞中に、更に一段と輝いて居るのを御覧ください。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

仏パテ社が9.5ミリ小型映画を最初に売り出した時にカタログに含まれていた初期のフィルムで、1912年に公開された中編映画(『La Fièvre de l’or』)の一場面を抽出したもの。

映画全体は金銭欲に取りつかれた男が亡父の銀行を乗っ取り投資ブームを仕掛け、人々が踊らされていく内容を描いています。途中の祝宴場面に使用されていたのがスタシア・ナピエルコウスカによるカンボジア風の舞踏でした。

[タイトル]
Danses Cambodgiennes

[原題]
La Fièvre de l’or

[製作年]
1912年

[IMDB]
tt0250381

[メーカー]
仏パテ社

[カタログ番号]
47

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 10m *1リール

1931 – 9.5mm 『ジョッフル元帥葬儀』 (Funérailles du Maréchal Joffre)

「9.5ミリ動画 05c ニュース&ドキュメンタリー」より

1931年初頭に亡くなった仏軍人ジョッフル元帥 [wiki] の国葬の模様を記録した動画。同氏は第一次大戦で指揮を執ったことで知られており、戦後も外交で活躍し1922年には家族と共に来日、「現代の偉将」としてメディアでも大きく取り上げられていました。

国葬は1931年1月7日に執り行われています。ノートルダム寺院を出発した葬列がコンコルド広場経由で移動していきます。

1931 - 9.5mm 『ジョッフル元帥葬儀』 (Funérailles de Maréchal Joffre) 02

今年のGWに国立映画アーカイヴで『明治天皇 御大葬餘影』『藤田男爵 葬式の實况』『小林富次郎葬儀』を見る機会に恵まれました。初期映画における「葬列/葬儀」の役割や意味合いを考えるようになっていて、この動画もそういった流れに含まれていくのだろうと思われます。

1931 - 9.5mm 『ジョッフル元帥葬儀』 (Funérailles du Maréchal Joffre) 03

[タイトル]
Funérailles du Maréchal Joffre

[公開]
1931年

[IMDB]

[メーカー]
仏パテ社

[カタログ番号]
3058

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m *1リール

1916 – 9.5mm ダグラス・フェアバンクス主演 『ドーグラスの飛行』 スペイン語字幕版

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

アメリカでは丁度何處の國でも同じ事ではあるが金は最大の力で金あらば何事も爲し得るのであるキャセアスグレゴールは彼れが一生をウヤムヤと只黄金のあとを追ふてのみ葬むる事を欲しなかつた。彼れは有意義に生きたかった瞑想 實現 且又戀に然るに機會は来た強き誘惑の力と眞実の心とを以て 陥し入れんとする密謀 移りかわり此の編中にダグラスフエーヤバンクスは独得の妙技を振つて大活躍をするのである見落すべからざる大傑作。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

昆虫学者の主人公(フェアバンクス)がひょんなことからビジネス界大物と縁を持つようになり、業界にはびこる犯罪一味を一掃し、麗しい令嬢(ジュエル・カーメン)と結ばれるまでを描いた短編作。

日本では『ドーグラスの飛行』として知られているフェアバンクス初期の主演作品。

タイトルクレジット、題、字幕などスペイン語仕様。振られているカタログ番号は英パテスコープ社の連番と同一。同社がライセンスを取ったプリントをスペイン語字幕に置き換えたようなのですが、フィルムの製造は仏パテ社が行っています。

[タイトル]
Aristocracia Americana

[原題]
American Aristocracy

[公開]
1916年

[IMDB]
tt0006357

[メーカー]
仏パテ社?

[カタログ番号]
10.049

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m *3リール

パテベビー映写機延長アーム

1920年代に人気のあったパテベビー映写機は、基本となる本体に対して様々な拡張パーツを後付けしていくことができるようになっていました。

ベビーカラーを使い白黒画像を彩色していく、モーターを取り付ける、拡大レンズで画角を変える…パテ社の正規品を使っている人もいれば、自作パーツによる改良を試みる猛者もいます。

120メートル用の大型リール映写用に市販されていたのがこちらの延長アームです。手元には微妙にデザインの異なる2組があります。今回はシリアル番号25836のセットを映写機に付けてみました。

パテ・ベビー映写機 A型(1922~23年)

「映写機」より


これまでに登録したパテ・ベビー映写機はいずれも1920年代後半の後期型モデルでした。今回手に入れたのは最初期のA型。大正期末に製造されていたモデルです。シリアルが「013544」ですので1923年に市販された一台でしょうか。

後期型との違いとして
1) 彩色されたロゴが正面のレンズ穴下にある
2) 手回し用のノブが球形をしている
3) フィルムの受け側に巻き取り用の仕組みがない
4) 10m用カートリッジしか装填できない(後期型は20m用も映写可能)
5) フィルムを送る鉤爪が1つしかない(後期型は2つ)などの特徴を持っています。

実用に使う予定はないのですが、初期の小型映写機をこよなく愛する者として、こちらの一台がコレクションに加わったのは嬉しい限りです。

本体シリアルナンバー: 013544
対応フィルム: 9.5mm (10メートルカートリッジ専用)
対応電圧:90~110v
製造国:フランス
製造時期: 1923年頃

フラッター嬢の『転生の舞』(1907年、仏、セグンド・ド・ショーモン監督、モノクロ版)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

フリユツテ孃は人間の美しい蝶々であります。で、その羽根は我々の眼であらゆる不思議な變化を受けます。パテー ベビーはあなた方にかずかずの色をもつとその翼のこの可愛いゝ蟲を御覧に入れます。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

仏パテ社の9.5mmフィルムカタログで12番となる初期の一本。

映画の誕生当初からリアリティを追及する動きと、ファンタジーに向かう動きの二つが見られました。メリエス作品などは後者に位置づけられ、今回ご紹介するスペイン出身のセグンド・ド・ショーモン作品もその流れに属しています。『転生の舞』は最初期の特撮/トリックフィルムで、蝶に扮した女性の羽が羽ばたくごとに模様と形を変えていきます。

パテ社9.5㎜版では手彩色(ステンシルカラー)の物も発売されておりますが今回入手できたのはモノクロ版。華やかな彩色版とはまた違った繊細な美しさがあります。

[タイトル]
Miss Flutter: Metempsycose

[原題]
Métempsycose

[製作年]
1907年

[IMDB]
tt0451432

[メーカー]
仏パテ社

[カタログ番号]
12

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 10m *1リール

手彩色版のデジタル化はこちらから(YouTube)

『シユーケツトと空の勇者』(1920年、シャルル・プランス監督)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

才智のひしめくこの一篇はまことに面白い間違ひの連續であります。一人の空の勇士がフオルカルキエド シストロンでクララトロンペツト孃と許可を得て出會つたのであります。それで二人はその輝くスターのシユーケツト孃とはからず同じホテルへ泊り合はせたのであります。で、空の勇士は身分を隠さうと思つてゐました。所が町の人のル ミノアがシユーケツト孃の心を得るがため勇士の制服をつけて彼女を誘惑し而してその勝利をほしいまゝにして居つたのであります。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

第一次大戦を背景とした恋愛コメディ物。

仏空軍のエースパイロットが休暇中に客車内で出会った女性と恋に落ち密会を始め、人目につかないよう軍服をホテルに預けます。その服をひょんなことから手に入れたのが冴えない主人公(シャルル・プランス)。まんまと空軍エースに成りすまし、片思いしていた舞台の歌姫(ジャンヌ・マルケン)にアプローチをかけていきます。

大戦中に「リガダン」の芸名で人気のあった喜劇役者シャルル・プランスの手によるもので、テンポの良い展開で見せてくれます。歌姫を演じているジャンヌ・マルケンは後年ルノワール監督の『ピクニック』で母親役を演じるなど興味深いキャリアを積み上げていきます。

[タイトル]
Chouquette et son as

[原題]
Chouquette et son as

[製作年]
1920年

[IMDB]
tt0193815

[メーカー]
仏パテ社

[カタログ番号]
681

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 10m *8リール

1921 – 9.5mm『ロヴェルのお嬢さん』 (ジャン・ケム監督)

ジュヌヴィエーヴ・フェリクス主演によるホームコメディ。人間嫌いで郊外で姉と生活している主人公(ジョン・ウォルム)と、隣家の娘(フェリクス)の恋愛模様に焦点を当てています。

テンポが悪く物語としては凡作。それでも1)冒頭に挿入されたジャズ演奏の場面が時代表現として興味深く、2)戸外ロケ撮影を重視し、木漏れ日など繊細な描写が成功しているなど見るべき点があります。

また、主人公の姉役で登場する女優さんの表情が多彩で飽きません。彼女はシャルロット・バルビエ=クラウスといって名優アンリ・クラウス氏の奥さんです。若いころはバルビエ名義で小さな舞台で活躍、デュヴィヴィエの名作映画『にんじん』(1925年版)でも意地悪な母親役を好演しています。

[タイトル]
Miss Rovel

[原題]
Miss Rovel

[製作年]
1921年

[IMDB]
tt0011471

[メーカー]
仏パテ社

1924 – 9.5mm リン・ティン・ティン主演 『義勇の猛犬』

1929年に米アカデミー賞が初めて開催された時、審査員投票で最初に男優賞に選ばれたのはリン・ティン・ティンという名のシェパード犬でした。

栄えあるイベントの初代男優賞が果たして犬でいいのか…審査結果は一旦キャンセルされ、再度の投票で『嘆きの天使』主演のエミール・ヤニングスに付与されることが決まりました。

『義勇の猛犬 (Find Your Man)』はそんなリン・ティン・ティンの初期作。カナダを舞台とし、婚約者と会うために山村にやってきた青年が材木の密売事件に巻きこまれていく物語です。

閉じこめられていたリン・ティン・ティンが助走をつけて檻に突進、しがみついて乗り越えてしまう場面、蒸気機関車との並走場面など見どころ満載。当時の子供たち、そして大人たちまで魅了されたのがよく分かります。

[タイトル]
Rintintin, redoutable témoin

[原題]
Find Your Man

[製作年]
1924

[Movie Walker]
mv2543

[IMDB]
tt0014901

[メーカー]
仏パテ社

[カタログナンバー]
918

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m *6リール

c1920 – 9.5mm『ヒトデとウニ』(科学/生物)

1923年、パテ・ベビーの動画フィルムが市販された際にNo.11として発売された最初期の作品。レトロな質感で撮影された生き物たちが幻想的な動きを見せます。海洋生物・水産物はスクリーン映えすることもあってこの後も頻繁に登場してきます。

Les Etoiles de mer et l’Oursin (Pathé-Baby 9.5mm B&W Print)

[原題]
Les Etoiles de mer et l’Oursin

[メーカー]
仏パテ社

[仏パテ社版カタログ番号]
11

[フォーマット]
30フィート(ノッチ有)