1918-1930 – DVD 『アウグスト・ジェニーナ作品集』(2020年、チネテカ・ディ・ボローニャ)

« Augusto Genina : Quattro film 1918-1930 »
(2020, Cineteca di Bologna)

ルイーズ・ブルックス主演作『ミス・ヨーロッパ』の新リストア版を含むDVD2枚組+ブックレット。収録作は以下の4作:

1)『さらば青春』(1918年、マリア・ヤコビニ&エレナ・マコウスカ他出演) Addio giovinezza!
2)『仮面と素顔』(1919年、イタリア・アルミランテ主演) La maschera e il volto
3)『さらば青春』(1927年、カルメン・ボニ&エレナ・サングロ他出演) Addio giovinezza!
4)『ミス・ヨーロッパ』(1930年、ルイーズ・ブルックス主演) Prix de beauté

ブックレットはイタリア語/英語によるもので、専門家による作品各論4編、主要俳優紹介、書き下ろしサントラ紹介を中心とした構成となっていました。

『ミス・ヨーロッパ』新リストア版よりルイーズ・ブルックス

旧版の低画質が指摘されていた『ミス・ヨーロッパ』の新デジタル化も朗報ながら、初期イタリア青春映画の秀作としてその名を語り継がれてきた1918年『さらば青春』を手の届くものにした功績は計り知れないものがあります。ジェニーナ監督の作風変遷、さらには第一次大戦後のイタリア映画変貌を理解していく手だてにもなり2020年に発売されたサイレント映画関連DVDでは最も重要な一枚になると思われます。

[出版年月日]
2020年8月27日

[出版者]
チネテカ・ディ・ボローニャ(Cineteca di Bologna)

[ISBN-10/13]
8899196672
978-8899196677

[再生時間]
338分

[フォーマット]
14.4 x 1.4 x 19.7cm 270g

マリア・ヤコビニ Maria Jacobini (1892 – 1944) 伊

イタリア [Italy]より

Maria Jacobini Autographed Postcard

藝風。打ち沈んだ面影、何とない寂しみを含むその頬笑み、胸の悩みに悶える女の性格、其を表す事に於て卓越した技巧を有するマリア・ヤコビニ。彼女は過去に於てはサヴオイア社作『ジヤンダーク』『生ける屍』で我々に好評を得たが、近く輸入された杜翁[トルストイ]の『復活』(チベル社作)が封切の暁には、更に卓絶した彼女の藝を味ひ得る事と信ずる。

経歴。マリア・ヤコビニ嬢が斯界に入つての第一歩はトリノ市のサヴオイア會社に於てであつた。永くの間舞臺上の經驗を積んだ嬢は、斯界に於ても忽ち好評を得た。さうして同社の、南歐映畫界にも誇るに足る傑作『ジヤンダーク』及び『全勝』(勝利の徽章)に主演を演ずるに至つた。尚數多の映畫に名優ヂロ・ロンバルヂー氏と共演し好評を得たが、一九一三年暮パスクワリ社に轉じ、翌一九一四年更にチエリオ社に入り、『悲しき集』『死なない爲』『死の恐ろしき翼』『アナンケ』等に主役を演じて世評に昇り、嬢の斯界に於る人気は一躍してエスペリア夫人、リダ・ボレリ嬢を凌がうといふ勢になつた。

「伊太利活動俳優列傳」 『活動画報』1919年6月号


『生ける屍』(1913年) 広告

1914年、パスクワリ社広告

第一次大戦前、イタリア映画の勃興期に女優としての活動を開始し、サヴオイア社、チベリ社、イタラ社など多くの映画会社で花形女優として活躍したのがマリア・ヤコビニでした。当時のディーヴァ女優の多くが女王様然としたオーラを漂わせていた中で、マリア・ヤコビニは一味違った柔らかで親しみやすい雰囲気を備えており、町娘役を演じた『さらば靑春』でもそういった個性は発揮されています。

第一次大戦後は他のイタリア女優同様国外へと拠点を求めていくことになります。20年代に苦戦したベルティーニやマコウスカ等と対照的に、マリア・ヤコビニは監督(デュヴィヴィエ、オツェップ)にも恵まれ無声映画末期にも観るべき作品を幾つか残しています。なかでも1929年の『ママン・コリブリ(Maman Colibri)』は彼女のエモーショナルな表現力を再確認できる優れた作品です。

『ママン・コリブリ(Maman Colibri)』
(ジュリアン・デュヴィヴィエ監督)より

[IMDb]
Maria Jacobini

[Movie Walker]
マリア・ヤコビニ

[出身地]
イタリア(ローマ)

[誕生日]
2月17日

エレナ・マコウスカ Elena/Helena Makowska (1893–1964) ポーランド/ロシア/イタリア

イタリア [Italy]より

Helena Makowska 1920s Autographed Postcard

藝風。マコウスカ嬢の名は他の伊太利俳優よりも、比較的遅く我愛活家に知られた。然し嬢の妖艶にして人を魅するその容姿と、深刻味に富む藝風は、我々の賞讃の的となり、今は伊國に於ても、悲劇女優として一流の地位を占め、性格役に於て殊に獨特の技能を發揮して居る。

経歴。嬢の生地は北風西比利亞の野を通して寒い露國莫斯科である。さうして其地に生育した嬢は天分の美聲を以て歌劇女優としてペトログラードに人々の憧憬の的となつて居たが、六七年前佛國巴里に來て、諸所の劇場に出演好評を得たが、後伊太利に赴き、一九一五年秋アンブロジオ會社の招聘を受け『魔の真珠』『ロマンチシズモ』(國よ若き國よ)『エヴァ・ネミカ』等にツリオ・カルミナチ氏と共演し、又ウムベルト・モザツト氏とダヌンツイオ原作『炬火』『ジオコンダ』及び『聖者』を完成し、後『乗合馬車十三號』にも主役を演じて名聲を擧げたが、一九一七年フエボ・マリ氏の入社と共に同氏監督の下に『苦惱』『ファウノ』に出演し、次いでロドルフイ氏監督の下に名優ルヂエロ・ルゲリ氏及びメルチエデス・ブリノネ嬢と『ハムレツト』を完成したが、同年秋コロナ社に轉じ『カイノ』を撮影し、一時メヅサ會社の映畫にも出演し、遂に昨年テスピ映映畫社に入つて『變説者ジユリアノ』を撮影し、引續き同社の映畫に出演して居る。さうして彼女の人氣は一躍して高くなつて來た。

「伊太利活動俳優列傳」 『活動画報』1919年6月号


ベルティーニ、メニケリ、ボレリ等に次ぐ第二世代ディーヴァ女優として登場した一人で『活動画報』でも日本ではやや遅れて紹介された旨が記されています。

現在ウクライナに位置するクルィヴィーイ・リーフにポーランド人技術者の娘として生まれ、歌の勉強をするためイタリアへと渡り映画デビューのチャンスを摑みました。『乗合馬車十三號』『ファウノ』『カイノ』『さらば靑春』など1910年代中盤~後半に活躍。第一次大戦後にイタリア映画界が斜陽化する中でドイツに拠点を広げていきます。今回入手したサイン入り絵葉書もこの時期の一枚。

1930年代に映画界を離れポーランドに戻ります。ナチスによるポーランド侵攻時には英国人男性と結婚していたため逮捕、強制収容所に移送され4年間を過ごしています。戦後、老け役として幾つかの映画に出演後1964年にイタリアで亡くなっています。

[IMDb]
Helena Makowska

[Movie Walker]
エレナ・マコウスカ

[出身地]
クルィヴィーイ・リーフ(現ウクライナ)

[誕生日]
3月2日