2022年1月6日 – 京都・葵公園 尾上松之助胸像

Statue of Onoe Matsunosuke at the Aoi Park/kyoto

6日午前中は繁華街で写真撮影や買い物を楽しんできました。町には正月気分が漂っているものの、錦市場などは平日だったこともあって人出は少なかったです。

午後に地下鉄で烏丸今出川まで向かい、そこから徒歩で東に移動。途上、鴨川を横切って三角州を抜けていきました。

三角州の尖った部分は「デルタ」と呼ばれていて、夏の休日は親子連れが水遊びに訪れ、夜は学生たちが酒宴を展開、時々謎のパフォーマンスや流しの演奏などもあったりで街の只中に一種独特な空間を形成。京都に幾つかある特異点のひとつです。

通りを一本挟んだ北に葵公園があって、そのまま北上すると糺の森から下鴨神社に抜けることができます。松之助像は風景に馴染みすぎていてもはや一般市民には気づかれない存在になっています。

よく見ると凛々しい胸像です。折角ですのでご挨拶まで。

大正14年(1925年) – 『日活映画』 9月号(映畫世界社)

Nikkatsu Eiga 1925 September Issue (Eiga Sekai-Sha)

「映画往来」「劇と映畫」「キネマ旬報」誌への寄稿で知られる淡路浪郎氏らを中心に編集された日活専門のファン雑誌。表紙は岡田嘉子さんで巻頭に西條香代子、澤村春子、岡田嘉子らのグラビアを収録。画質は並ながらも雰囲気の捉え方が上手ですね。

グラビアと新作紹介がメインで論考は少な目。書き手がお気に入りの俳優を推す内容が目立ち、対談もリラックスした調子が目立ちます。内輪ノリが強く好き嫌いの割れる内容ですが、小泉嘉輔の礼賛記事のように面白い視点を含んだ記事も含まれています。

新作紹介欄では松之助版『鞍馬天狗』(脚本は水島あやめと並ぶ女流脚本家先駆者の一人林義子)、浅岡信夫のデビュー作『母校の為めに』、砂田駒子・渡辺邦男・斎藤達雄を配した『妖怪の棲む家』。伯爵令嬢(西條香代子)の婚約者が殺された事件を探偵(南光明)が追っていく探偵活劇『闇の中の顔』などが紹介されています。

大正期らしい手描きのデザインフォントが良い味を出しています。雑誌サイズは縦22.1×横14.5cm。後半は紙の劣化・腐食が見られ角が削れたようになっていました。

9月号ということもあって夏に撮りためた写真が多く掲載されており後半は水着特集。水泳帽がファッションの一部になっていた様子も伝わってきます。

1918 – 『現代俳優鑑』 (木下隆一・編発行 演芸画報社)

Gendai Haiyū Kagami
(« Directory of Contemporary Actors & Actresses »,
1918, Tōkyō Engei-Sha)

1918年(大正7年)3月に演芸画報社から公刊された名鑑。以前、上方歌舞伎俳優の書画帖を紹介した際に俳号や経歴確認に使用したもので、その時は国立国会図書館のデジタル版で参照したのを実物で入手することができました。

今回、1925年に『芝居とキネマ』の巻末付録として作成された『現代俳優かがみ』を併せて紹介しています。両者を読み比べていくと7年しか違っていない同名本にも関わらず「俳優」の概念や性質が大きく変貌していることが分かります。

表紙デザインからも伺えるように演芸画報社版はあくまで歌舞伎役者を主とした構成。
 東京歌舞伎俳優之部:139名(49.6%)
 大阪歌舞伎俳優之部:36名(12.9%)
 新派俳優及び新劇団之部:64名(22.9%)
 喜劇俳優之部:15名(5.4%)
 各派女優の部:26名(9.3%)
 計280名

東京の歌舞伎役者がほぼ半数、新派と新劇系の男優が2割強を占めています。「女優」は寄せ集めのような形で最後に付されていて、全ジャンル併せても1割に届いていませんでした。現場で活動していた実数や割合とは異なっているのでしょうが、1918年時点で紹介に足る俳優を集めていくとこういった数値が出てくるという興味深いデータかな、とは思います。

1918年3月にはまだ映画女優は存在しておらず「女優」の枠組みで紹介されているのは帝劇(森律子、初瀬浪子)、新派(川上定奴)、文藝協会(松井須磨子)関連の役者たちです。そしてこういった大物にまぎれ、数年後に映画界で話題を呼ぶ面々(川田芳子、林千歳)が登場。当時、リアルタイムでこの書籍を手にした人々は数年後に日本に映画女優の流行が起こるとは想像できなかったと思います。それでも歴史の連続性はあるわけで、振り返ってみるなら予兆や兆候と呼べそうなものは見え隠れしています。

他にも嵐璃徳のように後年映画に軸足を移した歌舞伎役者や新派劇映画でなじみの深い面々(井上正夫、藤野秀夫、栗島狭衣)、五味國雄・國枝の父・國太郎や山田五十鈴の父・山田九州男らが含まれていて、初期映画視点から読んでも得るものが多い一冊です。

1925 – 『現代俳優かがみ』 (『芝居とキネマ』 第二年第一号 大正14年新年号付録)

Gendai Haiyū Kagami
(« Directory of Contemporary Actors & Actresses », supplement to the « Theater & Kinema » magazine Vol.2, No.1 (Jan 1925), Osaka Mainichi Shinbun-sha)

1925年(大正14年)初頭、『芝居とキネマ』新年号の巻末付録として作成された12ページの俳優名鑑。

 劇界・東京歌舞伎俳優51名(25.0%)
 劇界・大阪歌舞伎俳優26名(12.7%)
 劇界・東西新派俳優29名(14.2%)
 劇界・喜劇俳優6名(2.9%)
 劇界・女優11名(5.4%)

 映画界・松竹キネマ24名(11.8%)
 映画界・日活19名(9.3%)
 映画界・帝國キネマ25名(12.3%)
 映画界・東亞キネマ12名(5.9%)
 映画界・國活1名(0.01%)

以上の計204名について顔写真付きの略歴がまとめられています。

劇界と映画界の比は123:81となっており、ほぼ前者6割後者4割の割合。1918年版『現代俳優鑑』には存在していなった映画俳優が加わったことで舞台系の比率が低下しているものの上方歌舞伎だけ実数・割合共に7年前と同程度をキープしています。

男女比で見ていくと劇界の11名(岡田嘉子、水谷八重子含む)に映画界からの41名を加えて計52名の女優が紹介されていました。全体の2割5分を女性が占めたという結果で、映画界だけで見ると51パーセントと過半数を超えています。

『芝居とキネマ』 の新年号が出てから4か月後の1925年5月には報知新聞社から『世界のキネマスター』が公刊されています。各俳優に一頁が割かれ写真の画質が良く、掲載人数も多く名鑑としての完成度が高いです。ただ『キネマスター』は経歴紹介が簡素すぎて欲しい情報がなかったりするんですよね。生まれ~育ち~デビュー~現所属~代表作でまとめた『現代俳優かがみ』はその意味で使い勝手の良いものでした。

リリー・ヤコブソン (Lilly Jacobsson/Jacobson 1893–1979) スウェーデン

Lilly Jacobsson c1920 Autographed Postcard

スウェーデン出身、1911年にスヴェンスカ・ビオグラフテアーテン社短編映画の端役で女優デビュー。その後デンマークのノルディクス社に籍を移し、1910年代後半の北欧映画を代表する花形となりました。目鼻立ちのくっきりした北欧美人で当時の人気も納得ながらお人形さんの扱いに辟易し1910年代末に結婚と共に女優業引退を表明。

それを惜しいと思ったのが共演の経験もあるアスタ・ニールセンでした。自身が制作の中心となった大作『女ハムレット』(1921年)のオーフィリア役をオファーします。ハムレットへの淡い恋心が混乱に、狂気に変わり、自死で果てていく難しい役柄を見事にこなしました。

『マハラジャ最愛の妻』(Maharadjahens yndlingshustru 、1917年)より

『國民の友』(Folkets ven、1918年)より(右)

Lilly Jacobson & Gunnar Tolnaes in Himmelskibet (1918)

『エクセルシオール号/火星への旅』(Himmelskibet、1918年)でのヤコブソンとトルナエス

Lilly Jacobson in Hamlet (1921)

『女ハムレット』(Hamlet、1921年)より

今回入手したのは『マハラジャ最愛の妻』(1917年)のスチルをあしらった絵葉書。「リリー・ヤコブソン・エドワーズ (Lilly Jacobsson Edwards)」とサインしているため1919年にコーベット・エドワーズ氏と結婚した後のサインになると思われます。

[IMDb]
Lilly Jacobson

[Movie Walker]
リリー・ヤコブソン

[出身地]
スウェーデン(ヨーテボリ)

[生年月日]
6月8日

月形龍之介 (1902- 1970)

日本・男優 [Japanese actors]より

Tsukigata Ryûnosuke Autographed Postcard

本名門田潔人。明治三十五年宮城縣で生る。元輝子ことマキノ智子と浮名を流した色男、東亜キネマが映畫俳優として振出し、マキノ主腦男優の一人で常に時代劇に主演して大向からヤンヤの喝采を博す。『討たるゝ者』が初演映畫で『怪物』『毒刄』『戦國時代』『轉落』『修羅八荒』『愚戀の巷』最近の主演では『毒蛇』『砂絵呪縛第二編』『雪の夜話』等でキビキビした胸のすくやうな演技を見せてフアンを喜ばしていゐる。

『玉麗佳集』(1928年2月、中央書院)


マキノ以来のケンゲキ俳優月形は今フリー・ランサーとなり、千惠藏映畫、阪妻映畫、下加茂映畫、新興映畫等にドシ〱出演してゐる。トーキー俳優として臺詞がうまく、ケンゲキ俳優として殺陣が鮮やかなので、各社からひつぱりだこになつてゐる。劍道三段の腕前があり、現在のケンゲキ俳優中、眞劍を使ふスターは彼を措いて外にない。その殺陣には獨特の凄味がある。何しろ眞劍を使ふので、捕手達もビクビクものだが、未だ嘗て一度も人を負傷さしたことがないといふからえらいもの。

『映画とレビュー 人氣花形大寫眞帖』
(1936年1月、『冨士』昭和11年新年號附録)

[JMDb]
月形龍之介

[IMDb]
Ryûnosuke Tsukigata

[出身地]
日本(宮城)

[誕生日]
3月18日

昭和11年(1936年)1月: 『映画とレビュー 人氣花形大寫眞帖』冨士新年號附録

« Cinema & Revues Famous Stars Photo Album »
supplement to the « FUJI » magazine Vol.9, No.1 (Jan 1936)
published by the Dai Nippon Yubenkai Kodansha, Tokyo, Japan.

以前から何度か投稿で扱ってきた雑誌『冨士』の付録、今回は1936年度版で表紙は山路ふみ子さん。タイトルの通り映画と歌劇の二本立てで構成されています。歌劇編(松竹・宝塚)も充実して面白かったのですが今回は映画編のみの紹介となります。

冒頭は彩色のグラビアが並び、高杉早苗・飯塚敏子・水の江瀧子・小夜福子の4名が登場。続いて映画界から92名、歌劇界から82名の紹介が行われ、最後に特集記事が幾つか収められていました。

松竹の充実ぶりは圧倒的。三羽烏(高田稔、上原謙、 佐分利信)に加えて林長二郎、高田浩吉、阪東好太郎ら若手が成長を見せ、女優陣も田中絹代、桑野通子、川崎弘子と盤石の面々が並びます。バイプレーヤーにも味のある個性派(坂本武、小林十九二、近衛敏明)が集結。

日活は主要メンバーが大分入れ替わった印象があります。20年代に比べると小粒な印象は否めないものの実力派を揃えていてまだまだ健在。

華美な感じではないものの雰囲気のある俳優さんが揃っていたのが新興。

PCLの存在は短期間に留まりましたが現在でも根強い評価・人気を得ています。若手を中心に勢いのあった様子は伝わってきます。

大都、第一映畫、東京発聲辺りにも見るべき才能が埋もれています。

以前の『冨士』付録と比べて落ち着いた絵面が多数。不景気が体感できるほど広まっていた時期でもあって20年代〜30年代初頭の非現実な華やかさを前に押し出す人は少なくなっています。世相的に暗い方向に向かいつつも、照明や脚本術などの向上と相まって良作を生み出していたこの時期の邦画界に層の厚さ、底力を感じます。

[発行年]
昭和11年1月

[発行者]
大日本雄弁会講談社

[フォーマット]
164頁 26.2cm×18.9cm

[定価]
本誌と共に七十銭

1933 – 『東西映画 人氣花形寫眞大鑑』 冨士新年號附録

« National & International Cinema Stars Photo Album »
 supplement to the « FUJI » magazine Vol.6, No.1 (Jan 1933) 
published by the Dai Nippon Yubenkai Kodansha, Tokyo, Japan.

以前にも何度か紹介した雑誌『冨士』新年特別号の昭和8年度版。同誌が1930年代に残した映画関連特別号は以下の6冊になります。

昭和6年(1931年)1月: 『芝居と映画 名流花形大寫眞帖』
昭和8年(1933年)1月: 『東西映画 人氣花形寫眞大鑑』
昭和9年(1934年)1月: 『處女作・出世作・代表作 映画花形大寫眞帖』
昭和9年(1934年)9月: 『最新映画大鑑』
昭和11年(1936年)1月: 『映画とレビュー 人氣花形大寫眞帖』
昭和12年(1937年)1月: 『名扮装名場面 映画・芝居大寫眞帖』

『冨士』の特別号は各号によって編集方針が異なっています。1931年版は収録人数が多くややマイナーな俳優までカバーしており使い勝手が良いものですし、1934年版は作品名と監督、役者の紐づけに便利。1933年版の本号は写真の完成度が非常に高いものでした。

邦画が無声からトーキーに移行しつつある時期で俳優の入れ替わりも目立つのですが、若手ばかりでなくサイレント時代からの古参も今までと違う表情を見せています。澤蘭子の洗練、柳さく子の翳りの濃い妖艶さ、飯田蝶子の枯れ具合、スーツに丸眼鏡姿の伝次郎が放つ殺気など見どころ多し。

中野英治、大日向傳や岡譲二の伊達男っぷり、水久保澄子と桂珠子のエキゾチックな美しさ、岡田静江のクールさ、星玲子と琴糸路のしなやかな透明感…30年代に台頭した若手も負けていません。普段のイメージと違った雰囲気を出している俳優さんも多く、製作陣が時間をかけてそれぞれの個性を引き出していった様子が伝わってきます。他の写真にも興味のある方はこちらをどうぞ。

1915 – 帝政期ロシア俳優揃え(ピョートル・チャルディニンの誕生日会)

帝政ロシア/ソヴィエト初期映画史再訪 [01]


帝政ロシア末期に俳優としてデビュー、後に監督に転身し成功を収めたピョートル・チャルディニンの誕生日に集まった男女優の集合写真。1915年の撮影とされており別な構図で撮られた写真も存在しています。

前列左にオシップ・ルニッチ(Ossip Runitsch/Осип Ильич Рунич)
前列右にピョートル・チャルディニン(Pyotr Chardynin/Пётр Иванович Чардынин)

後列左より
ウラジミール・マクシモフ(Vladimir Maksimov/Владимир Васильевич Максимов)
ヴェーラ・ハロードナヤ(Vera Kholodnaya/Вера Васильевна Холодная)
ヴィトールド・ポロンスキー(Vitold Polonsky/Витольд Альфонсович Полонский)
イワン・フドレエフ(Ivan Khudoleyev/Иван Николаевич Худолеев)
イワン・モジューヒン(Ivan Mozzhukhin/Иван Ильич Мозжухин)

チャルディニン監督の代表作で帝政期のメロドラマの典型として知られる『静まれ、悲しみよ…静まれ』(Молчи, грусть…молчи、1918年)にはモジューヒン以外の6人が出演、それぞれの俳優の持ち味を見ることができます。

オデッサ撮影所の公式チャンネルより

モジューヒンは人脈的に別系統でヴォルコフやトゥールジャンスキー監督作品に多く出演。1918年にチャルディニン監督の下、ポロンスキー、ハロードナヤ、モジューヒンの共演企画が持ち上がっていたのですが国内の混乱の余波で製作中止となっています。

革命後にモジューヒンは亡命、チャルディニンとルニッチも国外に拠点を移します。1919年1月にポロンスキーが中毒死、翌2月にハロードナヤが病死。マクシモフとフドレエフは国内で細々と俳優業を続けていきます。同じメンバーが揃って写真を残す機会は二度とありませんでした。無邪気な笑顔が素敵だからこそ、その後の命運に切なさを覚えます。

1933年 – アレクサンドル・アルキリエール(ジゴマ役俳優)直筆書簡

「『ジゴマ』/ヴィクトラン・ジャッセ [Zigomar / Hippolyte-Victorin Jasset]」 より

1933年 - アレクサンドル・アルキリエール(ジゴマ役俳優)直筆書簡
Alexandre Arquillière 1933 Letter to Emile Drain

10月5日の12時半、バリュ通りのレストラン「デ・ヴォージュ」に世界演劇協会(SUDT)の同志数名が集まる予定になっています。興味あるのではないかな、と。良ければご参加を。

Quelques camarades de la S.U.D.T. se réunissent le 5 Octobre à midi et demi au restaurant « des Vosges » rue Ballu. Je pense que cela peut vous interesser et vous demande d’en être.

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1912年『ジゴマ後編(ポーリンの殉職とニック・カーターの復讐)』宣材スティル。左手前にジゴマ役のアルキリエール

1911-zigomar
スーパー8『松竹 日本映画史 前編』より『ジゴマ』抜粋

1911年の映画版『ジゴマ』で主役ジゴマを演じたのは舞台出身のアレクサンドル・アルキリエールでした。

アンドレ・アントワーヌが1887年に設立した「自由劇場」の古参メンバー。大手と一線を画した自然派志向で知られた演劇一派で、今で言うなら演劇界のオルタナティヴな流れに位置しています。

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1916年の演芸誌ランプ表紙を飾ったアルキリエール

同劇場時代に知りあったフィルマン・ジェミエとはその後長く交友が続いていきます。ジェミエは1922年にオデオン座支配人となり、次いで1925年に国内活動に留まらないグローバル演劇を指向する「世界演劇協会(SUDT)」を設立しています(現在のユネスコ国際演劇協会のルーツの一つ)。

アルキリエールも多かれ少なかれこの活動に絡んでいたようで、俳優仲間のエミール・ドレン宛に会合の日時を知らせたのがこちらの手紙です。封筒も残っていて消印は1933年10月2日付。

いわゆる美形俳優の枠に括られる俳優さんではないものの、存在感と豊かな表情が舞台映えします。映画との関連も深く、1908年からアルベール・カペラーニ短編に登場、10年代にジャッセ作品の主要俳優となって「ジゴマ」が当たり役となりました。その後もジェルメーヌ・デュラックの不条理家庭劇『微笑むブーデ夫人』(1923年)やジャン・ルノワールのエキゾチックな南部劇『荒地(ブレッド)』(1929年)で重要な役割を演じていました。

[IMDb]
Alexandre Arquillière

[Movie Walker]

[出身地]
フランス(ロワール県)

[誕生日]
4月18日

[データ]
住所入りの個人用便箋に手書き、13,5 x 21 cm。封筒はパリ市ガール・サン・ラザール局の1933年10月2日付消印有。

カルロ・ヴィート Carlo Wieth (1885–1943) デンマーク

「国別サインリスト 北欧諸国 [Nordic Countries]」より

Carlo Wieth Autographed Postcard

1885年コペンハーゲン生まれ。1900年代に舞台俳優として修業を積んだ後、1910年にウアバン・ガーズの監督処女作でもある戦争メロドラマ『1864年の一徴兵』の主人公役でスクリーンデビュー。

Carlo Wieth in En rekrut fra 64 (1910)
『1864年の一徴兵』での負傷した兵士役

その後ノルディスク社と契約しオーガスト・ブロム(『モルモン教の犠牲となり/Mormonens offer』1911年)、シェストレム(『聖職者/Prästen』1914年)、ホルガー・マドセン(『永遠の平和/Pax aeterna』1917年)、ドライヤー(『サタンの書の数ページ』第4エピソード)など北欧サイレント映画の全盛期に安定した演技で貢献していきました。また私生活では以前に紹介したクララ・ヴィートの最初の夫でもありました。

1920年代前半に舞台へと戻り映画主演が途切れていましたが、30年代後半に復帰し9作のトーキーに出演。1943年に心臓発作で亡くなっています。

[IMDb]
Carlo Wieth

[Movie Walker]

[出身地]
デンマーク(コペンハーゲン)

[誕生日]
12月11日

[サイズ]
8.8 × 13.4 cm

[データ]
Photochemie, Berlin K.1765

1976 – スーパー8 『阪妻 – 阪東妻三郎の名場面集』(大沢商会/テレキャスジャパン編)

「阪東妻三郎関連」より

1976 - super8 Bantsuma1976 super8 Bantsuma Back

1970年代半ばに発売されたスーパー8版のアンソロジー。中心となっているのは以下の6作で、それぞれ比較的長めの動画が引用されています。

『雄呂血』(1925年、阪妻プロ)


『影法師』(1950年、松竹)


『魔像』(1952年、松竹)


『破れ太鼓』(1949年、松竹)


『大江戸五人男』(1949年、松竹)


『あばれ獅子』(1953年、松竹)


この合間には1)初期作の短い断片、2)プライベートショット集、3)没後の葬儀の模様とお墓の映像が挿入されています。

フィルムの両端にやや劣化が見られますがビネガー臭や傷などの少ない綺麗なプリントです。フィルムの端を留めていたテープに「Yokohama Cinema」の文字が残されていました。

[タイトル]
阪妻 – 阪東妻三郎の名場面集

[メーカー]
企画・制作:テレキャスジャパン 提供:松竹 発売:大沢商会

[フォーマット]
スーパー8 白黒300フィート 磁器録音

大正8年(1919年)『活動畫報』4月号・活動新人紹介號

活動画報(大正8年4月号表紙)メアリー・ピックフォード

「活動新人紹介號」と題された一冊でグラビア、新人紹介、新作紹介、筋書などを中心とした102頁の内容となっています。

エリッヒ・フォン・シュトロハイムの第一回監督作『アルプス颪(Blind Husband)』がユニヴァーサル経由で公開され話題を呼んでいた時期に当たり、新人紹介でシュトロハイムが取りあげられ、場面集でスチル紹介、さらに「エリック・ストロハイム氏の出世物語」の記事が掲載されていました。グラビア冒頭を飾るフランセリア・ビリングトン嬢も同作のヒロインでした。

同作に次いで評判が高かったのがゴールドウィン映画社の人情ドラマ『曲馬団のポーリー』で、4ページに渡る筋書、場面集でのスチル紹介、主演メー・マーシュのグラビアを掲載。

メイン企画の新人紹介には12人が登場。

・マーシャル・ニーラン [Marshall Neilan]
・シャーリ・メイスン [Shirley Mason]
・アルマ・ルーベンス [Alma Rubens] 
・オリーヴ・トーマス [Olive Thomas]
・ユージン・オブライエン [Eugene O’Brien]
・H・B・ワーナー [H.B. Warner]
・ペギー・ハイランド [Peggy Hyland]
・キティ・ゴードン [Kitty Gordon]
・オリーヴ・テル [Olive Tell]
・ヴァイオレット・ヘミング [Violet Hemming]
・アラン・ドワン [Allan Dwan]
・エリッヒ・フォン・シュトロハイム [Erich von Stroheim]

現在でもそれなりに知られた名前が並んでいます。監督(ニーラン、ドワン、シュトロハイム)が三人含まれているのが興味深く、また見開きでアルマ・ルーベンスオリーヴ・トーマスが並んで登場する凄い配置になっています。

その他日活新派劇『涙日記』の筋書きや國活の場面紹介、イタリア俳優(イリーナ・レオニドフ、トゥリオ・カルミナティ)紹介など発見の多い一冊でした。

1923年頃 – 松竹キネマ 豆ブロマイド男優篇

今回投稿した『原色版・松竹キネマ』女優篇と同時期と思われる男優豆ブロマイド8枚。1920年代後半には鈴木傳明、岡田時彦と高田稔氏の三名が美形男優として人気を博し、30年頃に次世代俳優として登場した上原謙、佐野周二、佐分利信氏が「松竹三羽烏」として現代劇を支えていきました。

今回入手した豆ブロを見ると20年代前半でも岩田祐吉諸口十九勝見庸太郎の三氏が「プレ三羽烏」の位置付けで人気を得ていた様子が伺えます(この三氏はアイドル的な感覚でひとくくりにされるのは嫌がりそうですが)。他に一枚、松竹初期の子役として活躍された久保田久雄氏が含まれておりました。

岩田祐吉(直筆サイン)
諸口十九(直筆サイン)
勝見庸太郎(直筆サイン)…写真のみ登録

2002 – 『サイレント・プレイヤーズ』(アンソニー・スライド著)

Silent Players 01 cover
2002 Silent Players (Anthony Slide, University Press of Kentucky)

著者アンソニー・スライド氏はイギリス生まれの映画史家。幼い頃から地元で開催されていた無声映画上映会に参加し、1968年に「サイレント・ピクチャー」誌を創刊、1970年代に渡米して往時のスター俳優と接触を取り、忘れ去られたハリウッド映画史の断片を丁寧に救い上げる作業を続けてきました。

2002年に公刊された『サイレント・プレイヤーズ』はその集大成となる大著で男女優百名が3~8ページ程度で扱われています。スティル写真+紹介の形で俳優名鑑を踏襲しているものの経歴を時系列で追うことはせず著者が個人的に見聞きしたエピソードが中心。

ゴシップ、暴露話、裏話が多数収録されていて『ハリウッド・バビロン』と被る感触があります。ただケネス・アンガーが当時の愛好家たちの憧憬、熱気、神格化をそのまま引き継いでいたのに対し、スライド氏は一歩引いた場所から淡々と叙述しているのが大きな違いでしょうか。

メアリー・アスターが女優の本領を発揮したのは30年代であるとかメイ・マーシュは土臭い美しさがあるなど的確な指摘が多く刺激があります。また、『東への道』で母親役を演じたベテラン女優ケイト・ブルース、ぽっちゃり型女優ベイブ・ロンドン、早世した個性派喜劇俳優ジョン・バニーなどリアルタイムであまり大きく扱われてこなかった人々にスポットライトを当てているのも好感の持てるところです。

[原題]
Silent Players

[著者]
アンソニー・スライド

[初版出版年]
2002年

[出版者]
ケンタッキー大学出版

[ISBN-13]
978-0813122496

[フォーマット]
ハードカバー、464頁

[収録俳優]
ミニョン・アンダーソン Mignon Anderson [imdb]
メアリー・アスター Mary Astor [imdbmovie walker]
ウィリアム・ベイクウェル William Bakewell [imdbmovie walker]
リナ・バスケット Lina Basquette [imdbmovie walker]
マッジ・ベラミー Madge Bellamy [imdbmovie walker]
コンスタンス・ビニー Constance Binney [imdbmovie walker]
プリシラ・ボナー Priscilla Bonner [imdbmovie walker]
ホバート・ボスウォース Hobart Bosworth [imdbmovie walker]
イヴリン・ブレント Evelyn Brent [imdbmovie walker]
メアリー・ブライアン Mary Brian [imdbmovie walker]
グラディス・ブロックウェル Gladys Brockwell [imdbmovie walker]
ケイト・ブルース Kate Bruce [imdbmovie walker]
ジョン・バニー John Bunny [imdb]
ルース・クリフォード Ruth Clifford [imdbmovie walker]
エルマー・クリフトン Elmer Clifton [imdbmovie walker]
ミリアム・クーパー Miriam Cooper [imdbmovie walker]
ヴァイオラ・ダナ Viola Dana [imdbmovie walker]
ビービー・ダニエルス Bebe Daniels [imdbmovie walker]
ベン・ライオン Ben Lyon [imdbmovie walker]
フィリップ・デラシー Philippe De Lacy [imdbmovie walker]
キャロル・デンプスター Carol Dempster [imdbmovie walker]
ドロシー・デヴォーア Dorothy Devore [imdbmovie walker]
リチャード・ディックス Richard Dix [imdbmovie walker]
ビリー・ダヴ Billie Dove [imdbmovie walker]
クレア・デュブレイ Claire DuBrey [imdbmovie walker]
ヴァージニア・ブラウン・フェアー Virginia Brown Faire [imdbmovie walker]
ベス・フラワース Bess Flowers [imdbmovie walker]
ハワード・ゲイ Howard Gaye [imdbmovie walker]
リリアン・ギッシュ Lillian Gish [imdbmovie walker]
ダマール・ゴドウスキー Dagmar Godowsky [imdbmovie walker]
ジェッタ・グーダル Jetta Goudal [imdbmovie walker]
エセル・グランディン Ethel Grandin [imdbmovie walker]
ラルフ・グレイヴス Ralph Graves [imdbmovie walker]
ギルタ・グレイ Gilda Gray [imdbmovie walker]
コリーヌ・グリフィス Corinne Griffith [imdbmovie walker]
ロバート・ハーロン Robert Harron [imdbmovie walker]
ウィリアム・S・ハート William S. Hart [imdbmovie walker]
アリス・ホウエル Alice Howell [imdbmovie walker]
アリス・ジョイス Alice Joyce [imdbmovie walker]
マッジ・ケネディー Madge Kennedy [imdbmovie walker]
ドリス・ケニヨン Doris Kenyon [imdbmovie walker]
ジャック・ウォーレン・ケリガン J. Warren Kerrigan [imdbmovie walker]
ローラ・ラ・プラント Laura La Plante [imdbmovie walker]
ロン・チャニー Lon Chaney [imdbmovie walker]
チャールズ・チャップリン Charlie Chaplin [imdbmovie walker]
グレタ・ガルボ Greta Garbo [imdbmovie walker]
バスター・キートン Buster Keaton [imdbmovie walker]
ルドルフ・ヴァレンティノ Rudolph Valentino [imdbmovie walker]
ハロルド・ロイド Harold Lloyd [imdbmovie walker]
ベーブ・ロンドン Babe London [imdbmovie walker]
ベッシー・ラブ Bessie Love [imdbmovie walker]
ドロシー・マッケール Dorothy Mackaill [imdbmovie walker]
メアリー・マクラレン Mary MacLaren [imdbmovie walker]
パーシー・マーモント Percy Marmont [imdbmovie walker]
メエ・マーシュ Mae Marsh [imdbmovie walker]
ジェームズ・モリソン James Morrison [imdbmovie walker]
ジャック・マルホール Jack Mulhall [imdbmovie walker]
メイ・マレイ Mae Murray [imdbmovie walker]
ニタ・ナルディ Nita Naldi [imdbmovie walker]
メイベル・ノーマンド Mabel Normand [imdbmovie walker]
ジェーン・ノヴァック Jane Novak [imdbmovie walker]
ジョージ・オブライエン George O’Brien [imdbmovie walker]
ガートルード・オルムステッド Gertrude Olmstead [imdbmovie walker]
シーナ・オウエン Seena Owen [imdbmovie walker]
ジーン・ペイジ Jean Paige [imdb]
キャスリン・ペリー Kathryn Perry [imdb]
オルガ・ペトロヴァ Olga Petrova [imdb]
メアリー・フィルビン Mary Philbin [imdbmovie walker]
メアリー・ピックフォード Mary Pickford [imdbmovie walker]
ダグラス・フェアバンクス Douglas Fairbanks [imdbmovie walker]
アーリン・プリティ Arline Pretty [imdbmovie walker]
エスター・ロールストン Esther Ralston [imdbmovie walker]
チャールズ・レイ Charles Ray [imdbmovie walker]
ウォーレス・リード Wallace Reid [imdbmovie walker]
ビリー・ローズ Billie Rhodes [imdbmovie walker]
チャールズ・バディー・ロジャース Charles “Buddy” Rogers [imdbmovie walker]
クラリン・セイモアー Clarine Seymour [imdbmovie walker]
ローウェル・シャーマン Lowell Sherman [imdbmovie walker]
ポーリン・スターク Pauline Starke [imdbmovie walker]
グロリア・スワンソン Gloria Swanson [imdbmovie walker]
ブランシュ・スウィート Blanche Sweet [imdbmovie walker]
コンスタンス・タルマッジ Constance Talmadge [imdbmovie walker]
ノーマ・タルマッジ Norma Talmadge [imdbmovie walker]
アリス・テリー Alice Terry [imdbmovie walker]
フローレンス・ターナー Florence Turner [imdbmovie walker]
セダ・バラ Theda Bara [imdbmovie walker]
ルイズ・グローム Louise Glaum [imdbmovie walker]
キティ・ゴードン Kitty Gordon [imdb]
オルガ・グレイ Olga Grey [imdb]
アリス・ホリスター Alice Hollister [imdbmovie walker]
ヴァレスカ・スラット Valeska Suratt [imdb]
ジョージ・ウォルシュ George Walsh [imdbmovie walker]
ヘンリー・B・ウォルソール Henry B. Walthall [imdbmovie walker]
キャスリン・ウィリアムス Kathlyn Williams [imdbmovie walker]
ロイス・ウィルソン Lois Wilson [imdbmovie walker]
マージェリー・ウィルソン Margery Wilson [imdbmovie walker]
クレア・ウィンザー Claire Windsor [imdbmovie walker]
フェイ・レイ Fay Wray [imdbmovie walker]

市川 右太衛門 (1907 – 1999)

日本・男優 [Japanese actors]より

Ichikawa Utaemon Autographed Photo
Ichikawa Utaemon Autographed Photo

本名淺井善之助。明治卅九年、大阪市に生る。幼少より子役として舞臺に立ち、後市川右團次の門に入り、現在の藝名を名乗つて大正十五年マキノへ入社。昭和二年獨立して右太衛門プロダクシヨンを起し翌年より松竹と提携して現在。主な近作は「一殺多生剣」「雁金文七」「上州無宿陣」等、身長五尺七寸、體重十六貫二百目。趣味讀書、釣り。

『芝居と映画 名流花形大寫眞帖』
(1931年1月、冨士新年號附録)

[JMDb]
市川右太衛門

[IMDb]
Utaemon Ichikawa

[出身地]
大阪府(大阪市西区)

[誕生日]
2月25日

[データ]
11.3 × 16.3cm

平木 正之助 (生没年不詳)

日本・男優 [Japanese actors]より

Hiraki Masanosuke c1927 Autographed Postcard
Hiraki Masanosuke Autographed Postcard

1920年代後半に阪妻が立ち上げた個人プロダクションに入社、『血染の十字架』『砂絵呪縛』三部作、『鼠小僧次郎吉』など1927年作品に脇役で出演されていた俳優さん。活動期間が一年ほどと短く、翌年公開の『坂本龍馬』や『開化異相』ではクレジットから姿を消しています。

[JMDb]
平木正之助

[IMDb]
Masanosuke Hiraki

[出身地]
不明

[誕生日]
未詳

[データ]
8.5 × 13.5cm

1917-22 忘れじの独り花(32)マグナス・スティフター Magnus Stifter (1878 – 1943) 墺

「フィア・エーマンス旧蔵サインコレクション」より

Magnus Stifter c1920 Autographed Postcard
Magnus Stifter c1920 Autographed Postcard

1910年代から父親役などで活躍していたオーストリア俳優。キャリア初期にはアスタ・ニールセン主演で監督作を2本残しており、そのひとつ『恋のいろは(Das Liebes-ABC)』がDVD化されています。

Magnus Stifter and Asta Nielsen in Das Liebes-ABC
『恋のいろは(Das Liebes-ABC)』でのスティフターとニールセン

他にもルビッチの『カルメン』(1918年)やムルナウの『ジェキル博士とハイド氏』(1920年、現存せず)などドイツ映画の重要作に脇役で多く登場してきます。

[IMDb]
Magnus Stifter

[Movie Walker]
マグナス・スティフター

[出身地]
オーストリア(ウィーン)

[誕生日]
1月23日

[データ]
Photochemie, Berlin. K.2230. phot. Mac Walten, Berlin
8.5 × 13.5cm

南 光明(1895 – 1960)

日本・男優 [Japanese actors]より

Minami Koumei Autographed Postcard
Minami Koumei Autographed Postcard

本名鈴木光、明治三十年、東京市に生る。築地文海學校、立教中學。大原簿記商業科等に學び、大正九年松竹キネマ研究所に入り、蒲田スタヂオへ入社。マキノ入社は昭和三年五月。主な近作は「情恨」「次郎長旅日記」嵌り役は浪人者。身長五尺七寸體重十八貫五百目。趣味は旅行、野球、讀書等。

『芝居と映画 名流花形大寫眞帖』
(1931年1月、冨士新年號附録)

以前に昭和15年(1940年)の残暑見舞いをご紹介済。

[JMDb]
南光明

[IMDb]
Kômei Minami

[出身地]
日本(東京市京橋区築地)

[誕生日]
6月30日

[データ]
8.5 × 13.5cm

石山 龍児 (1893 – 1973)

日本・男優 [Japanese actors]より

Ishiyama Ryuji 1930s Autographed Postcard

映畫俳優で知つてゐるのは蒲田の石山龍嗣だけである。それも役者として知つてゐるのではない。もう十何年も前、學生のときに偶然のことから知りあひになつて、いつしよに義太夫をききに行つたり文學論をたたかはしたりして、たいへん仲が良かつたのである。

そのころ石山龍嗣はまだ蒲田に入社してゐなかつたしどこにも勤めてゐなかつたので、下宿で暇さへあれば表情の研究をしてゐた。

[…] こないだ私は四谷の映畫館で日本もののトーキーを見て、石山君が醫者に扮し怪我をした少女を診察するところを見た。おちついてゐて厭や味がなく、人がらなところは実際の石山君の性格を見る思ひであつた。地味ではあるが蒲田では相当な俳優なのであらう。(十年七月)

「映畫と石山龍嗣」、井伏鱒二
『肩車』(昭和11年)収録

Ishiyama Ryuji in Arigatosan (1936)

『有りがたうさん』(1936年、清水宏)より 左から石山龍児、上原謙、桑野通子

[JMDb]
石山竜嗣

[IMDb]
Ryuji Ishiyama

[出身地]
青森県

[誕生日]
9月2日

[データ]
8.5 × 13.5cm