古い映写機を集めていると様々なレンズに触れることになります。映写機用レンズといってもとりあえず映ればよいレベルの安価なものからトップメーカーの手による高級品までピンキリ。以前から実写時の性能比較をしたいとは考えていたのですが、調べても他に挑戦されている方はいないようでした。原因は幾つか考えられます。
1)規格が統一されていない。
カメラ用レンズには「マウント」の考え方があって同一マウントであれば互換性があります。マウントを変換するアダプターも充実してますので様々なレンズを一台のカメラで使って映り具合を比べることができます。映写機用レンズにはこの発想が希薄で、同一メーカーでも映写機のモデルが変わるとレンズ外径や形状が変わることが多く比較を難しくしています。
2)比較データを同一条件で取得するのが難しい
複数のカメラ用レンズを同一のカメラで比較するには同じ対象を撮影してデータを比べれば済む話です。映写機の実写性能はそうはいきません。例えば9.5ミリフィルムで言うと焦点距離25ミリのレンズであれば3メートルほど先にスクリーンを置くと横幅1メートルまで拡大されるのですが、焦点距離75ミリだと10メートルの映写距離が必要となります。しかもこの時の映像はただ「映っている」状態で、それを比較可能なデータとして取得するのはまた別な話。スクリーンに映っている画像をカメラで「撮影」するとその時のカメラのレンズの歪みなどが介入してしまうので比較用データとしては有効ではありません。
3)9.5mm用のテストフィルムがない
カメラ用レンズの解像度分析にテストチャートが使われることがあります。有名なのがISO12233(下)。
映写機用レンズにも似たようなものがあります。「テストフィルム」と呼ばれているもので、特に35ミリでは米SMPTE(映画&TV技術者協会)によるRP40(下)が使われていました。9.5ミリ用のテストフィルムを探したこともあったのですが見つけることはできませんでした。
こういった複数の問題をクリアしなおかつ使い勝手の良いシステムを組むのは大変そうです。
単純にレンズ自体の特性や性能を知りたいのであれば別なアプローチもあります。映写機レンズをマウントアダプター経由で(必要ならヘリコイドを追加し)カメラに装着して撮影する手法です。オールドレンズ収集家には以前から知られている方法で、検索すれば様々な映写機用レンズをM42マウントやEOSマウント、あるいはライカマウントに変換して撮影した作例を見つける事ができます。
上の検索画像は独メイヤー社の映写機用レンズ「キノン・スーペリアー」をミラーレスで使用した作例。同社の他レンズ(トリオプランなど)でお馴染みのバブルボケや同心円状のグルグルした球面収差を見て取ることができ、一般的に「クセ玉」と呼ばれるレンズだと分かります。とはいえ暗い空間でスクリーン平面にピントをあわせて映した際の実力はまた別な話、撮影用レンズとしての特性=実写時の特性にはなりません。





マクロ撮影用ベローズとエクステンションチューブを組みあわせて何かできないか。以前から温めていた腹案があって先日パーツのプロトタイプを試作してみました。まだ試行錯誤中で十分な形になっていませんが進展があれば続報として投稿していきますね。