1912 – ノーマル8 『コレッティを探せ』(1912年、マックス・マック監督)

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1912年に公開されたドタバタ喜劇。「探偵コレッティを48時間以内に捕まえることができたら100万マルク進呈!」の広告に人々が踊らされていく様子をコミカルに描いていきます。定番の追跡から女装まで様々な要素をコンパクトに詰めこみ、ベルリン市街地での撮影で都市風景をうまく取りこんでいます。

ヒロイン役で登場しているのは英女優のマッジ・レッシング。1900~10年代の綺麗目ポストカードも多く残っている女優さんながら、本作ではかなりはっちゃけた感じでドタバタを楽しんでいます。また途中に初期の個性派俳優として知られるハインリヒ・ピール(Heinrich Peer)も登場しています。

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女装中のマックス・マック(左)とマッジ・レッシング(右)
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ハインリヒ・ピール(右)

[原題]
Wo ist Coletti?

[製作年]
1912年

[IMDB]
tt0003565

[メーカー]
独DEFA社

[カタログ番号]
222

[フォーマット]
ノーマル/スタンダード8 60m(無声)

] 映画の郷 [ 電子工作部: 百年前の蛇腹カメラにMicro4/3用マウントを組みこんで初期テッサーをミラーレスで使う

この連休に3Dプリンターデビューしました。

設定のシビアさに初日は大苦戦。精神を削られながらも一通りアウトプットまで辿りつきました。連休二日目はCADを使ってデザインした小作品に挑戦。3Dプリンターが音を立て、白い樹脂を積み上げていくと…

一時間半ほどで完成したのがこちらのパーツ。元々1920年頃のICA社の蛇腹カメラのパーツを元にしています。元のパーツには赤窓があり、窓をふさぐための金属製の覆いがついていました。

このIcaretteは初期のやや特殊なモデルで、630判のフィルムとアトム版の乾板どちらでも撮影ができるようになっていました。ガラス乾板を使用する際は裏の蓋を引いて外し、乾板を差し入れて撮影する形になっています。今回はこの部分を3Dプリンタで差し替え、円い穴を開けてミラーレスに丸ごとマウントしていきます。

Icaretteの方は上手くはまったのですがミラーレス側(マイクロ4/3)が微妙にサイズがあわず一旦作り直し。

二回目の出力分は逆にやや甘くなってガタつく感じ。それでも光漏れなどなくマウントすることは出来ました。ミラーレスの電源をオンにすると百年前の初期テッサーレンズ(f=6.5、75mm、シリアル209080)が古風で繊細な画像を返してきます。買い物がてら試写をしてきました。良いレンズですが曇りでこの感じだとフードが必須?再度3Dプリンターの出番ですかね…

] 映画の郷 [ 電子工作部:PythonとOpenCVでスキャン画像の修復プログラムを作る

昨年10月に自作スキャナーを完成させこれまでに数十本のフィルムをデジタル化したのですが、気になったのがフィルム上の傷や埃がノイズとして入りこんでしまう点でした。

年末の休みを利用し、スキャンした画像の連続自動修復を行うプログラムを書いてみました。作業は基本パソコン上で行いプログラミング言語としてpythonを使用。画像処理ライブラリOpenCVで動かしていきます。

時系列を追った試行錯誤は別枠で詳述。本稿では現時点までの成果をご紹介していきます。

修復対象は1928年公開のジャン・ルノワール作品『城下町の決闘』。スキャンをしてみたところ、以前の映写に由来する深い傷が目立ちました。旧所有者があまり良くない映写機を使っていたと思われ、フィルムの各コマのほぼ同じ位置に大きな傷が入っています。

参考画像01

その他にも埃や繊維と思われるゴミの影が黒く映りこんでいます。それでも画像一枚ならフォトショップで何とかなるのですが、総コマ数が数千~数万となる映画フィルム修復ではあまり現実的とは言えません。或る程度のコマ数を一括処理できるプログラムを書く方が早そうです。

試行錯誤の末、以下の4ステップで修復を行う流れを考えてみました。

【ステップ1:深い傷の一括修復】複数枚の画像に繰り返し現れる傷にOpenCVの「インペイント」で一括修正をかける。

『城下町の決闘』から連続する画像10枚を選んでみました。

参考画像02参考画像03(オリジナル)
まずは各コマの右側に多く見られる斜めの傷に修正をかけていきます。黒地に手描きの白で傷を示したマスク画像を一枚用意します。
参考画像04(マスク画像01)
OpenCVの「INPAINT_TELEA」関数を使い、ファイル名の連番で自動修復を行う設定をかけながらマスク画像の白い部分を画像の周辺データから修復していきます。
参考画像05参考画像06(第一段階完了時)
白いパッチ部分をもう少し広めに取れば良かったですね。

【ステップ2:ノイズの一括除去】続いて、スキャン画像に個別で現れてくる黒い点状のノイズ(埃やゴミ)を認識させ一括で除去していきます。ステップ1同様にマスク画像と「INPAINT_TELEA」関数を使用していくのですが、先のステップではマスク画像が手描きだったのに対し、今回は画面上の一定の黒さ以上の部分を色抽出プログラムで抜き出し、各コマごとにマスク画像を自動生成、自動修復していきます。
参考画像07(マスク画像2)参考画像08参考画像09(第二段階終了時)
画面のあちこちに発生していたノイズの点々をある程度除去できました。

【ステップ3:薄い傷の個別修復】ステップ1では大きな傷、ステップ2で細かなゴミの影を除去した後、今度はコマ個別に発生している薄く細い縦線(映写機由来の傷)を消していきます。OpenCVの線描画機能(Line関数)を使用し、画面上の細かな傷をなぞった跡をマスク画像として保存、三度「INPAINT_TELEA」関数でノイズ除去を行います。細かな傷が対象ですので描線はステップ1より一段階細くしています。
参考画像10(マスク画像3)参考画像11(第三段階終了)

【ステップ4:最終調整】メイン作業はここまでで終了。最後は明度や輝度など微修正を施していきます。OpenCVでガンマ輝度を0.9に下げ、完成画像をオリジナルと比べてみます。
参考画像11(オリジナルと完成画像比較)
課題は山積みで精度もまだ上げられそう。でも今のプログラミング能力だと1週間で組めるのはこの辺まででした。

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もう一枚もこの程度まで回復。「綺乃九五式スキャナー」と同様、次段階ではユーザーインターフェイスを自作しモニター画面を見ながらボタンでステップ1~4の作業を行えるようしていきます。

1928 – 9.5mm 『城下町の決闘』(ジャン・ルノワール監督)

「9.5ミリ 劇映画」より

画家オーギュスト・ルノワールの長男、ジャンはフランス映画史上最も重要な監督の一人として知られています。しかしその初期作『城下町の決闘』(1928年)は長らく幻の作品とされてきました。35ミリ、16ミリのオリジナルネガが見つかっておらず完全版が残っていないのです。30年代末に英パテスコープ社が編集した9.5ミリ短縮版が唯一の現存版とされています。

時は16世紀、 カトリーヌ・ド・メディシス(ブランシュ・ベルニ)が権力を握っていたフランスで、剣術の達人である大公フランソワ・ド・ベイン(アルド・ナディ)が宮廷の美女イザベル(ジャッキー・モニエ)に懸想し、カトリーヌの許可を受けイザベルを己の妻にしようとします。イザベルの兄が異議を唱えるのですが、フランソワは決闘の末彼を殺し邪魔者を片付けるのでした。イザベルと相思相愛の仲だったアンリ・ド・ロジエは結納の場に乗りこみイザベルの強奪を試みるも失敗、事件の経緯はカトリーヌ・ド・メディシスの耳に入り、フランソワとアンリの馬上槍試合で決着をつけることになります…

『城下町の決闘』は監督自身の発案で製作されたものではなく映画会社から委託された仕事でした。そのためルノワール監督の本領が発揮されていない、のネガティヴな評価を受けやすい一作です。

軽めの恋愛や派手な剣術を前面に出して大衆受けを狙う辺り確かにルノワールらしくない内容と言えます。とはいえ、よく見てみるとメディシス役のブランシュ・ベルニやフランソワの母親役のシュザンヌ・デプレのベテラン勢も存在感を放っています。『城下町の決闘』は若手(ナディ、モニエ)を中心に繰り広げられるロマンスやアクションを前面に出しつつ、他方でドロドロした政治・宗教の側面(ベルニ)や悩める母の物語(デプレ)を読みこんでいける重層構造になっているのです。正直、真の主演はベルニ、デプレだと言って良いくらいです。

ルノワールは決して大衆芸術としての映画を低く見ていた訳ではありませんし、エンタメ路線と監督のこだわりをきっちり両立させた点で『城下町の決闘』は優れていると言えます。またそう考えるとルノワール監督作で9.5ミリソフト化されたのが本作だけなのもしっくりきますよね。

二年前にこのフィルムを映写機で観た時、右側に白い点々のノイズが入っているのは気がついていました。今回スキャンしてみて予想以上に深い傷があちこちにあると判明。傷そのものよりも、映写機では気づけなかった自分に軽い衝撃を受けています。

sample

[タイトル]
The Tournament

[原題]
Le Tournoi dans la cité

[製作年]
1928年

[IMDB]
tt0019486

[メーカー]
英パテスコープ社

[フォーマット]
9.5mm

1929 – VHS 『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』 (マルコ・ド・ガスティーヌ、白黒リストア版)

「『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』[La Merveilleuse vie de Jeanne D’Arc, 1929]」より

2011~12年頃に入手した仏VHS版。

主演のシモーヌ・ジュヌヴォワは1930年代半ばには結婚して女優業を退いていましたが、戦後、晩年の1980年代になって夫であり元映画プロデューサーのコンティ氏と共に本作の修復プロジェクトを始動させました。実際に作業の中心となったのはルネ・リヒティグ女史で1985年には琥珀色に染色された125分のリストア版が完成。この修復版を白黒で収録したのがVHS版となります。

1990年代半ばのVHSからDVDに切り替わった時期に発売されたため自国フランスでもほとんど流通せず、中古市場でも見かけることが少ない一作。1929年の初公開時にはドライヤー版のインパクトとトーキーの到来にかすんでしまった上、VHSの発売ではDVDにかき消されてしまう辺りが「フランス無声映画史上最も不運な映画」の面目躍如でしょうか。

元々2010年頃、本作をデジタル化した動画が(ユーチューブではない、そして今ではもう存在していない)動画サイトに投稿されていました。そこで初めて見て完成度の高さに驚きVHSを探し始めました。海外発送不可のセラーさんの手元にあるのを見つけ、輸入代行業者に委託して送ってもらいます。VHSの規格が日仏では異なっており手持ちのデッキでは再生できずさらに別な業者に依頼してデジタル化してもらった覚えがあります。

[原題]
La Merveilleuse Vie de Jeanne D’Arc

[公開年]
1929年

[IMDB]
tt0020165

[メーカー]
仏ルネ・シャトー社

[発売年]
1995年頃

[フォーマット]
VHS

c1930 – 9.5mm 『雪掻車の活躍』(伴野商店/鉄道省)

「9.5ミリ 伴野商店」より

映画と列車は浅からぬ縁があります。リュミエール兄弟の『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895年)を皮切りとし、ハリウッドでも『大列車強盗』(1903)や »鉄道活劇 »『 ヘレンの冒険』(1915-17)、キートンの『大列車追跡』(1926)など枚挙に暇がありません。

日本でも戦後8ミリの時代には多くの蒸気機関車がフィルムに収められて市販されていました。そういった傾向のルーツの一つとして、戦前の鉄道省が監修・製作した本作品を含めても良いのではないかと思います。

雪国の厳しい自然を背景にロータリー車やラッセル車、広巾雪掻車の実動している様子そして働く人々が映し出されていきます。


[原題]
雪掻車の活躍

[メーカー]
伴野商店

[カタログ番号]

[仏パテ社版カタログ番号]

[フォーマット]
9.5mm、無声、ノッチ有、20メートル

【祝】「綺乃九五式」が本年度「みんなのラズパイコンテスト」グランプリを受賞しました

「綺乃九五式」9.5ミリ専用 フィルムスキャナー

「みんなのラズパイコンテスト」は日経BP(ラズパイマガジン/日経Linux/日経ソフトウェア)が主催する電子工作のコンテストです。第6回目を迎えた本年度、「【ラズベリーパイ × 戦前映写機】綺乃九五式 フィルムスキャナー」で初参加させていただき、栄えあるグランプリを頂戴する名誉に預かりました。大きな賞を頂き恐縮かつ光栄に思っております。プログラミングはまだまだ初心者ですので精進して参ります。

仕様詳細はこちら

【「綺乃九五式」で甦る戦前日本の風景】

c1929 「かごめかごめ」 9.5mm 個人撮影動画
「かごめかごめ」1929年頃 9.5mm 個人撮影動画
1930年 「鳩と戯れる進一」 9.5mm 個人撮影動画
「鳩と戯れる進一」 1930年5月28日大阪四天王寺にて 9.5mm 川口光羊氏撮影
1929年頃 「池の掃除」9.5mm 個人撮影動画
「池の掃除」1929年頃 9.5mm 個人撮影動画
1923年 「震災のその後」 9.5mm 仏ニュースリール
「震災のその後」1923年撮影 9.5mm 仏パテ社ニュースリール
1910年代後半~20年代初頭 「日本雪景色」 仏ドキュメンタリー短編
「日本雪景色」1910年代後半~20年代初頭 9.5mm 仏ドキュメンタリー短編

「綺乃九五式」は全くのゼロから作り出されたシステムではありません。様々なアプローチで電子工作に挑戦しソースコードや記録をGithub、Qiitaに残してくれた沢山のプログラマーさんや自作愛好家様たち、そして個人的にご支援を頂いた廣田昌義、北原ルミ御夫妻に心より感謝申し上げます。

2019年11月28日