1917 – 9.5mm ベッシー・ラヴ主演 『ソウダスト・リング』(The Sawdust Ring)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

ワードプレスの某映画サイトに英映画史家・フィルム蒐集家のケヴィン・ブラウンロー氏(Kevin Brownlow)のインタビューが掲載されていて、興味深い逸話が紹介されていました。

1954年、舞台巡業でベッシー・ラヴが英国を訪れた際、ケヴィン氏は女優宛に手紙を書いたそうです。同氏が初期作品の9.5mmフィルムを所有していると伝えると「観たい」とのこと。家にベッシー・ラヴが来るという話になって大騒ぎに。若い頃の作品を久しぶりにみたベッシーは大喜びだったとか。

件の映画は1916年公開ということで『シスター・オブ・シックス(Sister of Six)』ではないかと思われますが、彼女が主演した作品でもう一つサーカス物の『ソウダスト・リング』が9.5ミリ化されています。

現時点では両作とも16ミリ、35ミリプリントが見つかっておらず9.5ミリ形式でのみ現存。ハルポディオン社が9.5ミリ版を元にデジタル化を行っていて2ドルでストリーミング視聴可能です。

[タイトル]
The Sawdust Ring

[製作年]
1917年

[IMDB]
tt0008539

[メーカー]
米パテックス社

[カタログ番号]
D-2

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m*3リール(第3最終リールのみ)

1910年代末 – 尾上松之助 『今戸大八』&『平井権八』 幻灯用 齣ガラススライド 4枚

Late 1910s – 4 Magic Lantern Glass Slides
Onoe Matsunosuke in Imado Daihachi (1917) & Hirai Gonpachi (1916)

1910年代末と思われる幻灯用の齣ガラススライド4点。

フィルムを基にしたこの種のスライドについては神戸大学の福島可奈子氏が「大正期から昭和初期における齣フィルムの蒐集と文化」(『映像学』2018年99巻)で言及されており、1917年に活動写真興行取締規則が施行された際に映画館から締め出された子供をメインターゲットに発売された、との指摘がなされています。

今回入手したのは『今戸大八』(1917年9月公開)『平井権八』(1916年5月公開)の一場面をあしらったもの。コンディションは良くありませんが赤や緑?、水色や黄土色の彩色が一部残っています。

グラディス・クーパー (Gladys Cooper 1881- 1971) 英

Gladys Cooper 1914 Autographed PostcardGladys Cooper 1919 Autographed Postcard

第一次大戦前に人気のあった英女優グラディス・クーパーのサイン物2点。当時のイギリスで5本指に入る人気にも甘んじることなく研鑽を積み『マイ・フェア・レディ』(1964年)の老貴婦人役を含む息の長い活躍を見せました。

初期サイレント作品では歴史ロマンスの『ボヘミアン・ガール』(1922年)が現存。美形俳優として知られたアイヴァー・ノヴェロとの共演作で、物語は単純ながら丁寧に作られています。また後にディートリヒとの二人三脚で名を馳せるスタンバーグ監督が初めてクレジット(助監督)された作品としても知られています。

2枚の絵葉書は同一所有者の旧蔵品で、裏面にはそれぞれ「1914年7月」「1919年9月」の入手日が記入されていました。

[IMDB]
nm0178066

[Movie Walker]
グラディス・クーパー(Gladys Cooper)

[誕生日]
12月18日

[出身]
イギリス(ロンドン)

ディオミラ・ヤコビニ (Diomira Jacobini 1899 – 1959) 伊

「国別サインリスト イタリア [Italy]」より

Diomira Jacobini 1929 Autographed Postcard

若くしてデビューした姉のマリア・ヤコビニを追うように1912年に女優デビュー、第一次大戦中に20作以上の映画に出演し知名度を上げていきます。

終戦後イタリア映画界が陰りを見せ始めるとマリアを含む多くの俳優は海外に活躍の場を求めました。ディオミラもドイツに渡り再スタートを切っています。

『死の花嫁』(1928年)
『死の花嫁』でのディオミラ(右はカリーナ・ベル)

この時期の作品で、1928年の歴史メロドラマ『死の花嫁』(Revolutionshochzeit)が現存。ディオミラは結婚式当日に革命派に見つけ出され、軟禁されてしまう花嫁を演じています。名監督A・W・サンドベルグの力量が発揮された同作は評判を呼び日本でも公開されました。

姉マリアの圧倒的な存在感、実績にややもすると隠れがちですが、『死の花嫁』からはお姉さんにはない硬質な透明感も伝わってきます。

[IMDB]
nm0414293

[Movie Walker]
ディオミラ・ヤコビニ

[誕生日]
5月21日

[出身]
イタリア(ローマ)

[サイズ]
9.0 × 13.9cm

[データ]
「1929年10月29日ベルリンにて」 « Ross » B.V.G. Berlin SW 68

1918 – ファニー・ワード & 青山雪雄出演 『お雪さん』 (A Japanese Nightingale, ジョージ・フィッツモリス監督)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

『チート』で話題を呼んだファニー・ワードが再度日本人男優と組んで残した日本趣味色濃いメロドラマ。ハリウッド日系俳優の先駆者である青山雪雄氏がファニー・ワードの兄役で出演しています。

原作は1901年に発表された小説で、数年前の『蝶々夫人』と同質のエキゾチスムを含みこんでいます。映画の公開当時は「日本人に対する侮辱的な表現がある」とそのままの輸入ができず、不適切部分を削除した形で上映されていました。

9.5mm短縮版は1927年頃に米パテックス社が発売していたもの。同社フィルムではカタログ番号Cで始まるコメディに人気があって時折市場で見かけますが、番号Dで始まるドラマ作品はほとんど残っておらず今回初めて現存を確認しました。

[タイトル]
A Japanese Nightingale

[製作年]
1918年

[IMDB]
tt0009237

[メーカー]
米パテックス社

[カタログ番号]
D-23

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m*4リール

[コンディション]
C+ (高温下で保管されていたようで各巻冒頭を中心に歪みあり)

ベルト・ボヴィ Berthe Bovy (1887 – 1977) ベルギー 大正10年のサイン絵葉書と明治43年の主演作『ダビデとゴリアテ』

「国別サインリスト フランス [France]」より

Berthe Bovy 大正10年直筆サイン入り絵葉書

1900年代中盤にシャルル・ル・バルジの元で演劇を学び、コメディ・フランセーズ入りして舞台デビュー。美人女優として話題を呼び、雑誌の表紙を幾度となく飾りました。20年代にはコクトーやコレットなど当時の文壇の最先端と交流を重ね、存在感を増していきます。

1960年代までの長いキャリアを持つ舞台女優さんですが、第一次大戦前(1908-14)には映画にも多く出演していました。有名な『ギーズ公の暗殺』(1908年)ではまだ端役だったもののすぐに主演がつくようになり、旧約聖書を元にした『ダビデとゴリアテ』(1910年)は後に9.5mmフィルムでも市販されています。

明治期の作品でもあり、野外の寸劇を収めたような粗い仕上り。本来は男であるダビデ王を女優が演じているためか不思議な倒錯感があります。

[IMDB]
nm0100664

[誕生日]
1月6日

[出身]
ベルギー(リエージュ)

[サイズ]
8.6 × 13.7cm

[コンディション]
B+

1918 – パール・ホワイト主演 『家の呪い(The House of Hate)』 DVD

連続活劇専門のDVD発売を手掛けている米シリアル・スカドロン社から2015年に発売されたDVD-r。資産家の遺産を受け取ることになった主人公パールが謎の覆面男に命を狙われる王道の物語です。本来は7時間に及ぶ作品ですが、現存するフィルムは半分の3時間半程となっています。

コレクター所有の16ミリをデジタル化したと思われ画質はあまり良くありません。『ポーリンの危難(1914)』や『拳骨(1915)』が一話一話の盛り上がりを重視していて全体では無理や破綻が見られるのに対し、『家の呪い』は流れを丁寧に作ってあって後半に向けてジワジワと盛り上がっていきます。

Helene Chadwick in The House of Hate

脇を固める役者としては美丈夫のアントニオ・モレノが安定した演技を見せ、後半に登場するヘレン・チャドウィックの個性も光っています。パール・ホワイト自身も自身のそっくりさんとして登場する死刑囚を巧みに演じていて、アクションにとどまらない展開で物語を豊かにしていました。