日本・男優より
明治三十年九月東京飯田町に生る。本名石山龍嗣。映畫は大正九年國活所属映畫藝術協會の俳優となつたのが始まり、大正十年正月より協會が松竹キネマに屬したので約四ヶ月許り、蒲田に籍を置き、それより專ら歸り映畫に出演し、大正十一年秋再び松竹に入社し今日に至る。舞臺としては松竹入社前は劇團に入社後も實演に數回出演し、經驗を有す主なる出演映畫、映畫藝術協會(歸山氏の)作品「幻影の女」に仕出しで出演したのが始まり、松竹では大正十一年以降「女と海賊」「籠の鳥」「新己がヶ罪」「青春」「戀の捕繩」「二人巡禮」「虹晴れ」「三人の娘」「村の人氣者」「樂天家の孤児」「村の花嫁」「好きなればこそ」等に主演或は共演助演。趣味は文藝、音樂、洋畫、相撲、拳闘、義太夫。嗜好は果物と鮭。鮭を好きだといふので鮭と言ふニツクネームがある。身長五尺四寸。體重十七貫。現住所-東京市小石川區宮下町四八〇。
『日本映畫俳優名鑑』(1928年7月、映畫世界社)
映畫俳優で知つてゐるのは蒲田の石山龍嗣だけである。それも役者として知つてゐるのではない。もう十何年も前、學生のときに偶然のことから知りあひになつて、いつしよに義太夫をききに行つたり文學論をたたかはしたりして、たいへん仲が良かつたのである。
そのころ石山龍嗣はまだ蒲田に入社してゐなかつたしどこにも勤めてゐなかつたので、下宿で暇さへあれば表情の研究をしてゐた。
[…] こないだ私は四谷の映畫館で日本もののトーキーを見て、石山君が醫者に扮し怪我をした少女を診察するところを見た。おちついてゐて厭や味がなく、人がらなところは実際の石山君の性格を見る思ひであつた。地味ではあるが蒲田では相当な俳優なのであらう。(十年七月)
「映畫と石山龍嗣」、井伏鱒二
『肩車』(昭和11年)収録
[JMDb]
石山竜嗣
[IMDb]
Ryuji Ishiyama
[出身地]
青森県
[誕生日]
9月2日
[データ]
8.5 × 13.5cm
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