ベティ・ブロンソン Betty Bronson (エヴェリン・ホワイト孃旧蔵サイン帖 16)

エヴェリン・ホワイト嬢旧蔵サイン帖 & サイン館・合衆国/カナダ/オーストラリアより

Betty Bronson c1928 Autograph

ベティ・ブロンソン嬢は一九〇六年十一月十七日、ニユージャージ―州のトレントンに生れた。家族がロスアンゼルスに家を建てたのに伴い幼少期を同地で過ごし、セント・メリーズ・アカデミーに通っていた。八歳にして東部に戻り、ニューヨーク市のパブリックスクールに通い後にイーストオレンジ高等學校の生徒となる。孃が名高いミハイル・ミハイロヴィチ・フォーキン氏に舞踏を学んだのはこの時期であった。これまでに様々な職業を経た上で、今や銀幕上で最も偉大な花形にならんとしているのは言を俟たない。女優としての最初の大きなチャンスは『ピーターパン』主演であるが、メトロ社やパラマウント社でエキストラを経験した見習い期間があつたからこそこの機会を掴むことができたのである。この才能豊かな独身女性はフランス語を話し、舞踏を得意とし讀書を好んでいる。身丈は五尺に體重十二貫、褐色の髪と碧い瞳を有する。

『銀幕著名人録』(ジョージ・H・ドーラン社、1925年)

BETTY BRONSON was born in Trenton, New Jersey, on November 17th., 1906, and in childhood lived in Los Angeles, where her family made their home, and where she attended St. Mary’s Academy. When 8 years old she returned east and attended a New York City Public School, and later was a pupil at the East Orange High School. During this period she studied dancing under the noted Fokine. She has had a varied career thus far, and now bids fair to become one of the great stars of the screen. Her first big screen opportunity came in the title role in Barrie’s “Peter Pan,” though this opportunity was not achieved until the youthful star had served her apprenticeship, playing extras in Metro and Paramount pictures. She is a gifted young miss, speaks French, dances and loves to read. She is slightly built, is 5 feet tall, weighs 100 lbs., and has brown hair and blue eyes.

Betty Bronson
“Famous film folk; a gallery of life portraits and biographies”
(New York George H. Doran Company, 1925)


一エキストラ・ガアルからジエムス・バリイ卿に見出され、一躍、「ピーターパン」の主役を振られたベテイ・ブロンスンは、實に彗星のごとく映畫界に現はれ、忽ちにして人々の憧憬と讃仰の中心になつてしまつたのである。僕は、始めて「ピーターパン」にブロンスンを見て、たゞ、彼女の新鮮さ、自然さ、あどけなさとに陶酔した。

「ベテイ・ブロンスン」 龜田啓
『世界映画全集 第11巻』(キネマ旬報社ほか、1928年)


一九〇六年十一月十七日ニユウ・ジヤーシ―州トレントに生る。初出演映畫「アンナの昇天」無所属。独身。身長五尺。體重十二貫。褐色の髪。青色の眼。出演映畫「アンナの昇天」「キツクイン」「異郷の露」「負けじ魂」「踊る若者」「ピーター・パン」「子の心親知らず」「シンデレラ物語」「猫の寢着」「好いて好かれて」「芝居の世の中」「殿樣專問娘」「曠原の烽火」(パラマウント)「永遠の都」「極樂島奇譚」(F・N)「ベン・ハア」(M・G・M)「シンギング・フール」「坊や」(W・B)

「ベテイ・ブランスン(Betty Bronson)」
『世界映画俳優名鑑 昭和6年版』
(映画世界社編輯部編、映画世界社、1930年)


1924年『ピーターパン』より

無声映画はお伽噺と相性が良く、『白雪姫』(1916年)や『青い鳥』(1919年)などいくつもの秀作が残されています。1924年版『ピーターパン』も公開時に話題を呼んだ一作で、溌溂した、時にいたずらな表情を浮かべ、しなやかな四肢を大きく動かし躍動するピーターパンの姿に多くの人が胸を躍らせていました。

『シンギング・フール』(Singing fool、1928年)

主役に抜擢されたベティ・ブロンソンは当時18歳。当初のファンタジー物から軽喜劇、さらにヒューマン・ドラマへと活動を広げていき、出演作には『ベン・ハー』や『シンギング・フール』などよく知られた作品が含まれています。アル・ジョンソンと共演した『シンギング・フール』ではそれまでにないしっとりした質感の演技を見せていて、女優としての伸びしろを感じさせるものでした。今回入手したサインはこの時期に当たるものです。

『裸のキッス』(The Naked Kiss、1964年)

パラマウント~ファースト・ナショナル~ワーナー~コロンビアと籍を移し、1932年の結婚にあわせて女優業を引退。晩年になって老け役としてTVおよび映画に復帰しており、サミュエル・フラ-の『裸のキッス』(1964年)ではヒロインの元娼婦(コンスタンス・タワーズ)に家を貸すジョセフィン役で出演。大戦中に失った恋人の思い出を守りながら生きている女性の設定で、配役紹介では特別出演扱いで最後にクレジット。大筋には影響をあたえないものの短い見せ場もあり、初期映画に対するフラー監督の敬意が込められているように思えます。ベティさんの演技も40年前に比べ遥かにこなれていました。

[IMDb]
Betty Bronson

[Movie Walker]
ベティー・ブロンソン