映画史の館・デンマーク & 35ミリフィルム より
ドライヤー監督による初期作『あるじ』の35ミリプリント。長さは300メートル(1000フィート)強。全篇107分の内29~44分に対応する第3リールになります。
英コダック社による琥珀染色プリントで字幕は英語。冒頭と終わりがけにパーフォレーションのダメージが大きく途中に数ヶ所切れがあったものの、実写回数の少ない綺麗なプリントでした。
『あるじ』に関しては2014~15年にかけ英BFI、米クリテリオンからそれぞれブルーレイが発売されており(後者は4枚組コレクションの一部)また最近になってデンマーク映画協会がオンラインで全篇をストリーミング公開しています。いずれもモノクロ版。琥珀色のバージョンは珍しいのではないかと。
妻(アストリッド・ホルム)の従順さを良い事にモラハラ的言動を繰り返す夫(ヨハンネス・マイヤー)を見かね、マッス婆さん(マチルデ・ニールセン)を中心に女性陣が結託して夫を懲らしめ改心させていく物語。現代でも十分にありえるシチュエーションで、起承転結のはっきりした構成も相まってドライヤ―作品としては分かりやすい作品とされています。
ただ、監督がフェミニズムの流行に乗ったという話ではないようです。妻イダや子供たちは現代社会の殉教者であり、彼らが上位の摂理(かつて乳母として縁のあったマッス婆さん)によって解き放たれていくという物語であって、その意味で『サタンの書の数ページ』『ミカエル』『裁かるるジャンヌ』『怒りの日』『奇跡』と同一の物語の変奏(ヴァリエーション)と見ることが出来るのでしょう。
[IMDb]
Du skal ære din hustru
[Movie Walker]
あるじ











