サイン館・イギリスより
愛活家の皆さんは三年程前に、英國倫敦の”アーサー・ピアーズン”と云ふ書店から發行されて、我國では丸善、中西屋等の書店で千部以上も賣れ行きがあつたと云ふ”ロマーンス・オブ・ザ・シネマ”と云ふ四六版百三十頁の小冊子の巻頭に、之と全く同じ寫眞が掲載されて居た事に御氣附かれたと思ひます。そして其の寫眞の下に今、私が云はうとする樣な説明が書かれてありましたのも、御讀の事と思つて居ります。私は自分の職責上更に其の説明書より以上の事を讀者の皆さんに知らせねばなりません。孃の名は既に皆さんの知られる如く”クリツシイ・ホワイト(Miss Chrissie White)”と申しまして英國一流のヘプヲ―ス會社に十一歳の春から出勤して本年廿歳になりました我が同盟國の女優です。同社の出版部々長として名聲名高きウイツトコツク氏は嬢が戰争の結果淋びしい英國フイルム界に花を咲かせた「アイリス」”Iris” や「やさしきラウエンダー」”Sweet Lavender” や「兩天秤」”The Second String” の三映畫に出演して成功をした事を日本の愛活家に傳へる樣との言葉から特に寫眞の寄贈がありました。丁度去月キネマ倶樂部に孃の出演した「愛の鬼」The Heart of Midlothian と云ふ五巻劇が映寫されましたから之を好機として皆さんに孃を御紹介申します。
「表紙の女優は誰か 英国ヘプヲース會社のクリツシイ・ホワイト孃」
『キネマ・レコード』 1916年7月號(7月10日付)
イギリスに”スターシステム”が持ち込まれたのは、[ウィル・] パーカーが「ヘンリー8世(Henry VIII)」(1911)で、サー・ハーバート・ベアボム-トリー(Sir Herbert Beerbohm-Tree)を起用した時であり、[セシル・] ヘプワースが、グラディース・シルヴァーニ(Gladys Sylvani)、アルマ・テイラー(Alma Taylor)、アイビー・クロース(Ivy Close)、クリシ―・ホワイト(Chrissie White)等を新人スターに仕立て上げた時であった。
「技術図書室 明日に向って100年目の出発(5) 」大類義 訳
『映画テレビ技術』1990年6月号
A 100-year start on tomorrow
American Cinematographer July 1989 Vol.70 No. 7

インターネット・アーカイヴ版
1910年代初頭の英国初期映画界花形女優の一人。英ヘプワース社のティリー嬢喜劇に相方のサリーとして登場し人気を博しました。同シリーズに関しては2010年にチネテカ・ディ・ボローニャから発売されたDVD『百年ひと昔:喜劇俳優とサフラジェットたち 1910-1914』に「ティリーの消防士(Tilly and the Fire Engines)」が収録されていました。現在英BFIが他の幾つかの作品をオンライン公開しているのですがこちらは英国在住でないと見ることが出来ない仕様になっています。
[IMDb]
Chrissie White
[Movie Walker]
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