1930年代中盤 – 仏パテ社 9.5ミリフィルム総合カタログ(『フィルマテーク・パテベビー』 第16版)

9.5ミリフィルム&パテベビー関連資料 より

Filmathèque Pathé-Baby
(16e édition, c1935)

仏パテ社が市販していた9.5ミリフィルムの総合カタログ。サイズはほぼB6(18.3 × 12.6センチ)。

同社は1923年に最初の総合カタログ(正式名称は『フィルム・ドゥ・ラ・シネマテーク・パテベビー(Les Films de la Cinémathèque Pathé-Baby)』)を市販しています。定価は1旧フランでページ数は72、やや厚手の冊子という感じです。連番とタイトルに粗筋、小さなスチル写真が添えられジャンル別に紹介されており、フィルムの内容が分かりやすく自分の欲しいジャンルの作品を探しやすい形になっています。

このカタログを補完する形で、毎月の新作を紹介する月刊の『家庭用小型映画パテベビー ◆◆月追加分(Pathé-Baby, Le Cinéma chez soi : Supplément)』が出されており、この小冊子を揃えていくと9.5ミリのフィルム情報が全て網羅できるシステムを作っていました。

1930年代となりフィルムの数が増えた中でフォーマットを刷新、『フィルマテーク・パテベビー(Filmathèque Pathé-Baby)』と名を改めたカタログに変わります。初版は1931年前後に出されていて、ページ数は350程になっています。青枠にカタログ名とパテ社ロゴをあしらった簡素な表紙デザインです。

※1931年分のエディションはアーカイヴ.orgにデジタル版があって無料閲覧可能

1920年代に行われていた『◆◆月追加分』の情報提供はなくなり、その代わりに定期的に版を更新するようになっていきます。1933年の第11版になるとページ数が398まで増えているのが確認されています。

今回入手したのは1934~35年頃と思われる第16版。表紙デザインは旧来を継承しつつページ数がさらに増え428頁になっていました。

作品紹介の基本フォーマットは1920年代の『フィルム・ドゥ・ラ・シネマテーク・パテベビー』から変更はなく、スチルを1~3枚と粗筋を添える形になっています。

巻末にはフィルムタイトルのアルファベット順の索引と、連番順の索引が併設されています。1931年度版の連番順と比べると初期フィルム(カタログ番号1桁~2桁)の絶版が目立ちカタログから削除されているのが分かります。

一方で1930年代前半にはカテゴリをひとつ新設。5番目のカテゴリーが「喜劇短編と長編ドラマ(5:Comédies et Drames)」だったのが「5a:喜劇短編と長編ドラマ(5:Comédies et Drames)」と「5b:パテ・セレクション(Pathé-Sélection)」に分割されます。

パテ・セレクションは秀作長編映画を100メートルリール4~8巻の形にまとめたもので高級路線の位置付けを与えられた作品群です。レオンス・ペレ監督『ヴェルダンの戦い:歴史のヴィジョン』やトゥールジャンスキ―監督の『ヴォルガ!ヴォルガ!』等のフランス作品、『ハンガリー狂騒曲』『聖山』などの国外作品を収めておりフリッツ・ラング監督のニーベルンゲン二部作や『メトロポリス』『スピオーネ』の仏語字幕版もこの欄で紹介されています。

9.5ミリ小型映画が好きな方には情報の宝庫で読み物としても十分に楽しめる一冊です。