1928年のアンナ・ステンと『彼の履歴/扇動者』(全ウクライナ寫眞映畫部、1928年)

帝政ロシア/ソヴィエト初期映画史再訪 [23] & 絵葉書館・ロシア/ソ連/旧ソ連構成国 より

Anna Sten 1928 Russian Postcard

アンナ・ステンは以前にドイツ時代(1931年/昭和6年)のサイン入り絵葉書を紹介済です。他にも未紹介ながらハリウッド期のサイン物も持っていたりなど、折に触れて当時物のアイテムを探していたりします。

この1、2年で手に入れようとしていたのが1920年代末頃のソ連製絵葉書。オンラインで扱っているロシア在住セラーさんがいたのですが、ウクライナ侵攻とそれに伴う経済制裁により直接取引が出来なくなったため一旦は諦めました。先日たまたま合衆国に眠っている別デザインの一枚を発見、取り寄せたのがこちらです。モスクワの出版社ゴスナク(Гознак)から1928年に出版されたもので、3万枚限定だった旨が宛名書き面に記されています。

アンナ・ステンはデビュー作がゴスキノ作品でドイツに渡る以前の出演作はほぼ全てソ連製。立ち位置としてはソ連女優です。ただ出身はウクライナのキーウで、一作だけ全ウクライナ寫眞映畫部(VUFKU)の映画に主演。それが1928年公開の『彼の履歴/扇動者』(ロシア語タイトル:Его карьера ウクライナ語タイトル:Провокатор)でした。

『彼の履歴/扇動者』はソ連映画の定石に従ったもので、帝政下の悪辣な要人を狙った過激派学生組織の動きを追っています。組織の一人が逮捕され、拷問にあって将軍暗殺計画を自白、警察が阻止しようと試み…の流れになっています。この時に実行役で登場する女学生リパを演じたのがアンナさんでした。

VUFKU公式サイトでのアンナ・ステン紹介ページ(ウクライナ語のみ)

VUFKU公式サイトのアンナ・ステン紹介はこの『彼の履歴/扇動者』の登場場面をメイン写真に使用。作中のベストショットなのでしょうね。『帽子箱を持った少女』の田舎娘役とも異なった雰囲気で、当時のソ連映画界にない垢抜けた存在感が際立っています。VUFKU公式の扱いは小さいものの、生れ故郷にきちんと置き土産を残していたと分かって嬉しくなりました。

[IMDb]
Yego kar’yera

[VUFKU]
The Provocator/His Career

[JMDb]