映写機館より
先日入手したエクラA型映写機はそのままでは実写に使用できない状態でした。第一の不具合はモーターに連動した「主軸が動かない」。シャッター羽根が回らず、スプロケットも動かず、フィルム送りも機能しない…この状態で電源を入れてもモーターに負荷をかけるだけですので、まずはここから手を加えていくことにします。
エクラA型を正面から見たところ。レンズの下に円形のパーツがあります。これは2枚のプレートを重ねたクラッチになっており、噛みあった状態でモーターをオンにすると主軸(メインシャフト)が回り始めます。
この主軸(メインシャフト)はシャッター羽根を回すだけでなく、映写機内に鉛直に設置されたシャフトと噛みあって回転運動を作り出しています。
角度を変えて後方左から映写機を見たところ。シャフトを収める金属の円筒に銀色のキャップが被せてあります。このシャフトと交差する形でもう一本の短いシャフトが噛ませてあって、この回転がスプロケットを動かしフィルムを進めていきます。映写機下側、巻き取り用のアーム側も同じ形でした。
合理的でよく出来た仕組みだと思います。とはいえネジ山を切ったシャフトを金属製の筒に収めて回転させる発想は、定期的にメンテナンスをしている時期なら良いのですが放置されたまま時間が経つと油が固まってシャフトが動かなくなります。今回入手した機体がそのパターンで、ゆっくりとシャフトを回しながら注油を行いある程度動きを軽くすることに成功しました。
一日目はここまで。一度ばらした際に別な問題が見つかり、日を改めてもう一度手を入れていきます。


修復二日目。もう一度ランプハウスを外していきます。ランプハウスはネジ一つで留められているだけなので、このネジ(左の写真赤丸)を外すと動かすことが出来ます。すると本体背面のゲート部分がむき出しになります。3つのネジ(右の写真緑丸)を外して内部を見ていきます。
メインシャフトにはおにぎり型のギアが固定されていて、その回転によって周囲のフレームが上下移動を行います。フィルム送り用の鉤づめを動かすこのシステムは、以前にパテベビー解体新書・応用編「鉤爪によるフィルム送りの仕組み」で説明したものと同一です。


手動で主軸(メインシャフト)を回してみました。多少の重たさがあるもののフレームの上下動はきちんと機能していました。


問題はここからなのです。フィルムの送りの鉤爪は、上下動だけではなく前後への移動と連動し、楕円形の動きを成すことでフィルムを下へと掻き下ろしていきます。この前後移動を生み出すのがおにぎり型のギアに併設された段差機構でした。エクラ映写機でもこのシステムが採用されており、鉤爪パーツの突起がせり出した段差の部分では押し出されて映写機の外側に飛び出し、段差の押しこまれた部分では内側に引っ張られてフィルムから離れ引っ込む形になって…いませんでした。
パテベビー映写機だと、本来この部分にはスプリングが噛ませてあって鉤爪が映写機内側(写真右の黄色矢印)に戻ります。そういった仕組みが見当たりません。鉤爪が外に向けて出るものの、その後引っこまずに出っぱなしになってしまいます。これだと上手くフィルムを送ることができません。


思案のしどころです。エクラ映写機(あるいはそのベースとなったパテ・ルーラル映写機)のこの部分を紹介・説明している人はいないため自力で何とかしていかないといけません。部品取りで残しておいた小さなパーツからスプリングを取り出し、鉤爪に引っかかる形にしてみました。
背面部を閉じて動作確認。フィルムを掻き下ろす動きの時は爪が外に飛び出し、一番下まで来ると映写機内側に引っこんで上がっていく。楕円形の動きそのものは出来ています。
ただ、引っこんだ状態でもまだ1ミリ程爪が外に出ています。映写機内に完全に隠れてはいません。このままフィルムを送ろうとするとパーフォレーションとフィルム表面を傷つけてしまいます。スプリングあるいはバネを別な形でかませるか、鉤爪ユニットをのものを前方に1ミリ程移動させるか…また次回以降に修正していきます。



