アリス・ホワイト Alice White (エヴェリン・ホワイト孃旧蔵サイン帖 03

エヴェリン・ホワイト嬢旧蔵サイン帖 & サイン館・合衆国/カナダ/オーストラリアより

Alice White c1928 Autograph

一九〇七年七月廿五日ニユウ・ジャーシー州ダァスンに生る。フアースト・ナシオナル・スタア。宛名First National Studio, Bubank Calif. 出演映畫「海馳ける猛虎」「戀のかけひき」「アメリカ美人」(F・N)「紳士は金髪がお好き」(パラマウント)「怪我騒動」「高速度娘」「高速度娘ツボミの巻」「同ジヤズの巻」「レヴユー時代」「ハロルド・テイーン」「戀のサアカス」「高速度尖端娘」(F・N)

「アリス・ホワイト」
『世界映画俳優名鑑 昭和6年版』
(映画世界社編輯部編、映画世界社、1930年)


アリス・ホワイトも、モダンガールの最先端として、若いフアン達の衆望を負つて來た。少し愛嬌に乏しい憾みはあるが、よく跳ね廻り、良く踊り、そのお轉婆と近代的な才色にかけては申し分がない。「高速度娘」などゝいふ映畫は、ストオリとしても随分馬鹿らしいものだが、彼女が陽氣に跳ね廻ってお轉婆振りを發揮してゐる内は、それでも私達は朗らかな氣持で見てゐることが出來るのだ。

「記憶すべき女優」
『映写幕上の独裁者』(酒井真人、中央公論社、1930年)


一九〇七年八月廿八日ニユウ・ジャーシー州バタアスンに生る。本名、アルヴア・ホワイト。ブロンド、五尺二寸。十三貫三百。ロナーク・カレッヂ卒。無所属。 出演映畫「海馳ける猛虎」「戀のかけひき」「アメリカ美人」(F・N)「紳士は金髪がお好き」(パラマウント)「怪我騒動」「高速度娘」「高速度娘蕾の巻」「同ジヤズの巻」「レヴユー時代」「ハロルド・テイーン」「戀のサアカス」「高速度尖端娘」「高速度娘戀愛合戰」「ハリウッド盛衰記」「摩天街の銃聲」「駄々ッ子キヤグニー」(F・N)「豪華船」(パラマウント)

「アリス・ホワイト」
『洋画総覧』(S.Yコンパニイ文芸課 編、スタア社、1934年)


『レヴュー時代』(1929年、マービン・ルロイ監督、ファースト・ナショナル)
『シカゴの未亡人』(1930年、エドワード・F・クライン監督、ファースト・ナショナル)
『駄々っ子キャグニイ』(1933年、ロイド・ベーコン監督、ワーナー・ブラザース)

1920年代後半、爽やかな短髪姿と健康美でクララ・ボウと並び称される人気を誇ったのがアリス・ホワイトでした。日本では「高速度娘」の独自設定が大当たりとなり同名を冠した作品が次々と公開。現在であれば国内でもこういった見た目、雰囲気、性格の女性にお目にかかるとはいえ、1920年代には皆無だったわけで当時の映画愛好家たちの驚きも推して図るべし。アリスさん自身も時代の最先端とリンクしている自信に満ち溢れキラキラした輝きを放っています。

一方、当時の評に目を通していると女優としての表現力を期待されていなかった様子も伝わってきます。『映写幕上の独裁者』の引用では「ストオリとしても随分馬鹿らしいものだが、彼女が陽氣に跳ね廻ってお轉婆振りを發揮してゐる内は」の辺りに本音が透けている感じ。

カメラの前に立つだけで映画を存在させてしまう。才能・実力の証でもあるのですがそれだけでトップ女優の立ち位置は維持できません。アリス・ホワイトは1930年代の初頭、新ジャンルとして勃興し始めていたギャング物映画と接点を持ち始めます。

『シカゴの未亡人』『摩天街の銃聲』『駄々っ子キャグニイ』といった一連のワーナー/ファースト・ナショナル作品がそれで、エドワード・G・ロビンソンやジェームズ・キャグニーと共演。特に『シカゴの未亡人』では物語を積極的に動かすヒロイン役に挑戦し成功を収めています。また日本未公開の社会派作品『従業員出入口』(Employees’ Entrance、ロイ・デル・ルース監督)にも見るべきものがあります。クララ・ボウにも言えることで、セクシャリティを切売りして名を挙げただけの女優ではありませんでした。

[IMDb]
Alice White

[Movie Walker]
アリス・ホワイト