映写機用レンズの肖像より
戦後のフランスで小型映画(8/9.5/16ミリ)用レンズの最高峰としてアンジェニユー社と双璧を成していたのがソン・ベルティオ社でした。同社が提供していたシノール(Cinor)は当時、多くの仏製映写機、動画カメラに採用され愛用されていたものです。
動画撮影機用のシノールは幾つか所有しているのですが、今回初めて映写機用の個体を入手。パテ社やウルティエ社の8ミリ用に準備されていた焦点距離f=25mmです。アルミ鏡胴の先端が花弁状に開いた美しいデザインをしています。
室内でのテスト撮影より。同時に紹介しているエクラ映写機用レンズやキプターと違ってバブルボケやグルグルボケは発生していません。背後は滲むように描写されレンズ外周近くでわずかに光量低下。普段本サイトで紹介している戦前レンズと異なり、コーテイングされた新しめのレンズでカラーフィルムも念頭に置いて設計されているため色の抜けも良い感じです。



2022年春に一度外に持ち出して行ったテスト撮影より。やや樽型になっていて、外周辺りの光量が落ちグルグルボケが現れ始めています。全体としては穏やかな透明感のある上品な描写、フランス製レンズの良さが良く出ている一本でした。


