1984~85 – 16mm 『火童』 (1984) 『草人』 (1985) 『沒牙的老虎』 (1985) 上海美術電影製片廠/上海美术电影制片厂

フィルム館・16ミリ より

1980年代中盤に上海美術電影が制作した16ミリアニメーション短篇3作。手元に届いたのは「影片保护袋」の紙袋に入ったフィルム2本と付随する紙資料一式。後述するようにフランスから送ってもらったもので『火童』は単独で一リールにマウントされておりフランス語ナレーション入り。『草人』と『沒牙的老虎』はセットで別リールにまとめられており、前者はナレーション無しの音楽伴奏のみ、後者はオリジナルの中国語ナレーション入りとなっていました。

また紙資料として、それぞれの作品に対応した16ミリフィルムカタログのコピー(中国語、英語、フランス語、スペイン語)が付されていました。

フィルムは元々金属ケースに収められていました。重さがあるためそのまま送ってもらうと予算オーバー、セラーさんと相談し今回はケースを諦めフィルムだけを送ってもらった形です。

金属ケースは中国からフランスに輸送する際に使用されたもので、発送者名「北京:文化部対外文化連絡局(北京:文化部对外文化联络局)」と受取人名「在マルセイユ中華人民共和国総領事館(中华人民共和国驻马赛总领事馆)」を記載したラベルが貼付されています。

フランスと中国は1964年に国交を樹立。パリに大使館が置かれその他幾つかの主要都市に総領事館が設置されています。南仏マルセイユの領事館もその一つで、在仏中国人や観光客の便宜を図りつつ親睦事業を行っており、このフィルムもイベント時に使用された同領事館の旧蔵品と考えられます。

北辰SC-10映写機での実写より。別投稿で紹介したデジタル版と比べるとわずかに黄色が強く出ている(映写用ランプの光の色です)ものの褪色はなく、ビネガーシンドロームもない良いプリントでした。

『火童』は中国の少数民族哈尼/ハニ族に伝わる伝承を下敷きにした作品で、ファンタジー要素とアクションを上手く噛みあわせた作品でした。カタログのコピーにも明記されているように、上海美術電影が独自に発展させた切絵アニメ(剪紙片/paper-cut animation)の技法で製作されています。

『草人』は『しぎと鳥貝が相争う』と同様に古の中国に題材をとった作品。後者が水墨画アニメの手法で製作されたのに対し『草人』は切絵アニメとなっており、一部は拡大すると紙の重なりを確認することが出来ます。

『沒牙的老虎』は趣を変え、ポップなタッチで展開されていくコミカルな一作。権力・暴力で威圧してくる「虎」を相手に頓智を効かせてその「牙」を無力化していく風刺劇の要素が含まれています。

[IMDb]
The Fire Boy

[维基百科]
火童
草人
沒牙的老虎