2002 – 『上海美術電影作品集 Vol.2』 パイオニアLDC版DVD

情報館・DVD より

Chinese Animation Film Works Vol.2
(Various Directors, Pioneer LDC, 2002)

日本では1980年代以降に中国製のアニメの紹介が本格化し、上映会や現場レベルの交流を通じ一定の認知度を得るようになっていきました。この流れを受け、2002年に中華アニメの代表作を収録したDVDが二枚発売されています。1枚目は上海美術電影の代表作をまとめてあり、2枚目はやや知名度は劣るものの同スタジオの多彩な創作を伝える内容になっていました。

1: 鹿鈴(「鹿铃」 1982年、唐澄)

2: しぎと鳥貝が相争う(「鹬蚌相争」 1983年、胡進慶)

3: 蝴蝶の泉(「蝴蝶泉」 1983年、徐景達・常光希)

4: 火童(「火童」 1984年、王柏荣)

5: 鹿を救った少年(「夹子救鹿」1985年、林文肖・常光希)

6: 琴と少年(「山水情」 1988年、盛特偉)

「鹿鈴」「しぎと鳥貝が相争う」「琴と少年」は水墨画アニメーション、「蝴蝶の泉」「火童」「鹿を救った少年」は中国の少数民族に伝わる伝承を下敷きにしています。

「蝴蝶の泉」と「火童」は起承転結のうねりが心地よく、エンターテイメントの要素と表現へのこだわりを高いレベルで両立させています。また「鹿鈴」と「琴と少年」には異種の生き物同士、さらに人間と自然が音楽を通じ共振・共鳴し、連携していく発想が含まれていました。『Vol.1』の「お母さんを探すオタマジャクシ」や「牧笛」にも見られた発想である時期の上海美術電影作品を特徴づけていく主題の一つとなっています。

一方どの作品にもエロ・グロ・ナンセンスや暴力・性描写は含まれていません。児童教育・教化を目的とした国策の一環で製作された事実は映像からもはっきり伝わってくるのです。表現の自由に制約がかけられている代わりに、採算や締切り面の制約が小さく作品ひとつに膨大な工程を含めることが出来た…日本や合衆国と全く異なった前提でアニメーション表現を展開させるとこうなるのだな、と色々考えさせられました。