1997 – 『おお活動大写真』 2CD(キングレコード)

Oh Katsudou Daishashin
(1997, Various, King Records)

松田春翠氏を語り部とし、聞き手・嵯峨京子さんとの穏やかで心地よい掛けあいを楽しみながら初期映画史を再訪していく音源集。本サイトでもこれまでカセット版を元に何度か(『ジゴマ』『さらば青春』『プラーグの大学生』)引用してきています。オリジナル音源のレコード版が2種類(チャップリン『キッド』の一場面をあしらった黄色いジャケットの一枚物と複数の映画のスチルをコラージュした2枚組)あるのを以前から不思議に思っていて、今回発生経緯を確認してみました。

1968年 レコード盤(1枚) 商品番号 SKK 396

  • A1:ジゴマ
  • A2:不如帰
  • A3:さらば青春
  • A4:血煙り高田の馬場
  • B1:尾上松之助の「渋川伴五郎」
  • B2:チャップリンのキッド
  • B3:忠治旅日記
  • B4:プラーグの大学生
『明治百年記念行事等記録』(1969年 総理府大臣官房)
https://dl.ndl.go.jp/pid/11933110/1/259

ベースとなる音源は1967年に録音されており、翌1968年にキングレコードから黄色ジャケットの一枚物(商品番号SKK 396)が発売されています。無声映画鑑賞会が続けてきた上映会「おお活動大写真」の派生プロジェクトであると同時に、明治改元(1868年)から一世紀を記念する「明治百年記念行事」の一環でもありました。

1976年 レコード盤(2枚組) 商品番号 SKD 394-395

  • A1:ジゴマ
  • A2:不如帰
  • A3:さらば青春
  • A4:血煙り高田の馬場
  • B1:尾上松之助の「渋川伴五郎」
  • B2:チャップリンのキッド
  • B3:忠治旅日記
  • B4:プラーグの大学生
  • C1:チャップリンの消防夫
  • C2:キートンのはったり大酋長
  • C3:豪勇ロイド
  • C4:戦艦ポチョムキン
  • D1:金色夜叉
  • D2:東京行進曲
  • D3:坂本龍馬
  • D4:銀座の柳
  • D5:一本刀土俵入り

1976年に新音源を追加した2枚組版(SKD 394-395)発売。『豪勇ロイド』『金色夜叉』は当時の若手弁士(伊達春風、澤登翠)を交えた掛けあい説明の形を取っています。ライナーノーツに岸松雄氏が「無声映画の醍醐味」を寄稿しています。

1989年 カセット版  商品番号 K25H-828 

  • A1:ジゴマ
  • A2:不如帰
  • A3:さらば青春
  • A4:血煙り高田の馬場
  • B1:尾上松之助の「渋川伴五郎」
  • B2:忠治旅日記
  • B3:プラーグの大学生

1989年、「映画渡来90年記念」としてカセット版(K25H-828)発売。1968年版を元にした構成ながら録音時間の都合で『チャップリンのキッド』が省かれています。佐藤忠男氏寄稿の「素晴らしい映画説明」がライナーノーツ冒頭に置かれていました。

1997年 2CD版 KICS 637-638

[Disc 1]

  • 1:ジゴマ
  • 2:不如帰
  • 3:さらば青春
  • 4:血煙り高田の馬場
  • 5:尾上松之助の「渋川伴五郎」
  • 6:チャップリンのキッド
  • 7:忠治旅日記
  • 8:プラーグの大学生

[Disc 2]

  • 1:チャップリンの消防夫
  • 2:キートンのはったり大酋長
  • 3:豪勇ロイド
  • 4:戦艦ポチョムキン
  • 5:金色夜叉
  • 6:東京行進曲
  • 7:坂本龍馬
  • 8:銀座の柳
  • 9:一本刀土俵入り

1997年に初のデジタル化。ライナーノーツを含め1976年版を丁寧に復刻しています。

2020年 CD復刻&デジタルストリーミング版 KICS 3939

  • 1:ジゴマ
  • 2:不如帰
  • 3:さらば青春
  • 4:血煙り高田の馬場
  • 5:尾上松之助の「渋川伴五郎」
  • 6:チャップリンのキッド
  • 7:忠治旅日記
  • 8:プラーグの大学生

2020年8月にDVD新版が発売。1968年版をベースとしておりジャケットもオリジナル版を踏襲(右上、キングレコードのロゴの下の商品記号は消されています)。複数のオンラインプラットホームを活用してストリーミング視聴にも対応していました。

大正モダン~昭和レトロ再評価の流れや、周防正行監督作『カツベン!』公開(2019年)、映画上映をイベントとして楽しんでいくコト消費志向も相まって、映画説明を巡る環境はこの10年程で幾分改善された印象を受けます。講談や都都逸、漫談、落語などと隣接した話芸の面白さには抗いがたい魅力があって折に触れて接していけたら良いかなと思っています。