1919 – 『赤き灯』(アルベール・カペラーニ監督) 2012年 ブリュッセル映画博物館版 DVD

情報館・DVD/DVD-R/ブルーレイより

The Red Lantern (1919, Albert Capellani, Metro/Nazimova Productions)
2012 Belgian Cinematek Restoration DVD

アラ・ナジモヴァが自身の名を冠して立ち上げたナジモヴァ・プロダクションの第2弾に当たる作品で、フランス無声映画の重鎮として知られるアルベール・カペラーニ監督を招聘して製作されたエキゾチックなメロドラマ。1900年に発生した「義和団事件(庚子事変)」を背景にしています。

モスクワのアーカイヴに保存されていた35ミリのポジが1970年代にベルギーの王立映画博物館に寄贈され、1990年代中盤にリストア作業が行われたそうです。米国の各アーカイヴに保存されていた資料を元にロシア語字幕を英語字幕に置き換え、当時の楽譜をベースとした新録音のサントラを加える形で発売されたのがこの2012年ブリュッセル映画博物館版となります。

200ページを超えるブックレットは各分野の専門家による20余りの論説文を収録。主演女優や監督、ナジモヴァ・プロダクションや当時のプロモーションの実態について紙数が割かれる一方、義和団事件や(作中で重要な意味を持つ)纏足について、また20世紀初頭のアメリカ合衆国でのオリエンタリズムなど作品の背景理解を深める論考が置かれ、一冊を読めばほぼ作品全体像を理解できる仕掛けになっています。

『赤き灯』は現在の視聴者が見た時に評価が割れる一作です。欧米の無声映画にしては時代考証とセッティングに時間や資金を費やしているものの限界はあって頓珍漢な設定や解釈が多数含まれていますし、それ以前に物語の主軸となる悲恋が上手く描けていないからです。一方で欧米人がミステリアスな東洋に思いを馳せながら作り上げた淡い幻想として見るならこれはこれで興味深いのかなと。

またこの作品はアンナ・メイ・ウォン(Anna May Wong)がエキストラとして映画に初出演した一作として知られています(灯籠を持つ少女の一人)。後年のインタビューで、アンナさんは自分の出演部分は見切れてしまっており画面には登場していないという回想を残していました。ブックレットでは専門家の一人がフレーム毎の確認作業をし、アンナさんらしき人物の映し出された一瞬を見つけ出しています。断定はできませんがおそらく正解だろうな、と。

[IMDb]
The Red Lantern

[Movie Walker]
赤き灯