1917 – 『幽靈船』 (The Mystery Ship)泉淸風訳 春江堂・大活劇文庫

ノベリゼーション [日本] より

The Mystery Ship (1917, Universal, dir/Francis Ford et al.) 1918 Shunkô-dô Novelisation “Collection Great Serials (Dai-Katsugeki)”

かつて青年探検家ガストンとリーが南海の孤島を訪れ、神殿に埋もれたる財宝を見つけた。発掘にとりかかろうとした二人であったが島の火山が噴火、地元民によって助け出されたものの深手を負い、秘宝の姿を見ることなく島を離れざるを得なくなった。

20数年が経過。病魔に侵されたリーは臨終の床で娘のベティー(ネヴァ・ガーバー)に地図を手渡し、自身ではかなわなかった財宝の採掘を託す。

父の遺志を継ぎ、べティ―は大型船ウィズダム号を購入し婚約者ハリーと共に南洋に向かう。しかし同じ港から僅かに遅れて出立したカルビン号がその後を追っていた。この船はガストンの息子、マイルズ(ベン・F・ウィルソン)の所有せしものであつた。かつての行き違いから、ガストンはリーが自身を亡き者にして財宝を独り占めしようとしたと思いこんでおり、マイルズもまた亡き父の言を信じてベティーを憎むべき敵とみなしていたのであつた。

べティ―は誤解を解こうと説明を試み、二人の間に次第に共感以上の感情が生まれていた。これを快く思わなかったのがベティーの婚約者ハリーであった。ハリーは財宝を独占せんと欲しベティーとガストン二人の謀殺を試みる。奇しくも秘宝の在りかを示した地図は二つに引き裂かれ、一方はベティー&ガストンの手に、もう一方はハリーの手に渡ったのであった。果たして幻の宝を手に入れるのは誰か、秘かにべティ―を守る覆面黒衣姿の男は何者か、そして主人公たちの戀物語の行方やは如何に。


ハリウッド連続活劇は1914~16年が突破口となっていて、『マスター・キー』や『名金』といった先駆的作品、ヘレン・ホームズ、パール・ホワイト、ルース・ローランド等の俳優を第一世代と見ることができます。

この流れに追随し活劇ブームを拡大していったのが1917年以降に現れた第二世代。パテ・エクスチェンジ社は『七つ真珠』や『二重鍵の謎』でモリー・キングを売り出し、アイリーン・キャッスルを招いて愛国主義活劇『パトリア』を製作。同時期、ユニヴァーサル社はベン・ウィルソン&ネヴァ・ガーヴァーを主人公に据えた一連の大作製作に乗り出していきます。『電話の聲』に続くウィルソン&ガーバー共演第二弾となったのがこの『幽靈船』でした。

全18章仕立て、前半1/3はロマンスやスパイ物などの要素を折りこんだ海洋活劇、その後2/3は合衆国に舞台を戻して複数の思惑が入り乱れる財宝争奪戦になっていきます。春江堂版は作品前半部をまとめた翻案で、脱獄囚「ファントム」や政府直属の諜報員「X-19」の活躍する後半部を大幅に省略した形になっています。

[IMDb]
The Mystery Ship

[Movie Walker]