2007 – 『オープン・ロード』(英BFI)

情報館・DVD/DVD-R/ブルーレイより

The Open Road
(Claude Friese-Greene, 1926) BFI 2007 DVD

白黒ではなく色のある映画を観たい、そんな願望は映画テクノロジーの誕生時(19世紀末)からあって、技術者や企業が知恵を絞って様々な方法を模索していました。カラー映画の黎明期、仏パテ社による手彩色のステンシル・カラー(1898年)などと並んでこの分野に刷新をもたらしたのが英国の写真家・発明家のウィリアム・フリーズ=グリーン(1855-1921)でした。

同氏の開発した2色撮影システム(2ストリップ・カラー)は欠点が多くまだ商用展開できるレベルに達していませんでした。このシステムに更なる改良を加えたのがウィリアムの息子クロード・フリーズ=グリーン(1898-1943)で、1920年代中盤に自ら撮影した作品を幾つか発表しています。このうちイギリス南端から北端までの長旅を記録した『オープン・ロード』をデジタル化したのがこのDVDです。

2ストリップ・カラーはテクニカラーの前身の技術と見ると分かりやすいと思います。テクニカラーは光の三原色(赤・緑・青)ごとに別々に取りこんだ映像を重ねあわせ色彩を疑似的・近似的に再構成していく発想でした。 2ストリップ・カラーはその前段階で、光の3原色のうち赤と緑を別々に撮影して重ねあわせていきます。青が欠けているため現実の色彩を完全には再現できないものの、肌色を上手く出すことができ、また暖色と寒色の綺麗な対比、後年のテクニカラーに通じるまろやかな発色など幾つかの強みを備えていました。

市街地、海水浴場、農村、民家、森、遊園地、港、工場、動物園…『オープン・ロード』は純粋なロード・ムービーで、旅路で目にしたものを片っ端から捉えていきます。しかも登場してくる人々の表情がどれも良いのです。笑っていたり泣いていたり、澄ましていたり興味津々にカメラを見返していたり、悪意や底意がなく見ている側の心も温かくなってきます。撮影者クロード氏の人柄が被写体の選択に反映されていたとも言え、製作者の個性が投影された優れた作品に仕上がっています。

◇◇◇

以前から「画像加工ソフトを使えば、手持ちの写真を2ストリップカラー風に処理できるのではないか」と思っていて、今回自分の撮影した写真で試してみました。

カラーチャンネルをいじっていきます。ブルーチャンネルで赤:緑:青が「0:0:100」が既定になっているのを「50:50:0」に変更するのみ。

左側がオリジナルで右側が加工後。薄めの青だった部分は緑になり、群青色は鈍色に、黄色は色として認識されず白になっています。人の肌も若干の黄色が入っているため処理後はやや白が強く出ています。光学的な処理としてはこれで間違いないのかな、と。

とはいえ『オープン・ロード』のまろやかな発色には到底及びません。レンズの問題もあって、テッサーだと描写がシャープ過ぎてしまうのでアンジェニューのようなふわっとした甘い描写のレンズを使い、レトロ感のある被写体を選ぶともう少し近づける気がします。また、自力でスクリプトを書いて連続処理できるはずで、自分の撮影した動画にあえて「フリーズ=グリーン」風のエフェクトをかけて楽しむ、という選択肢も出てきます。

[IMDb]
The Open Road