フィルム館・9.5ミリ (伴野商店) より
佐渡金山の鉱山町として栄えた相川で、抗夫相手の女たちが主席の騒ぎ唄として歌ってきたもので、越後甚句と同系の歌である。昔は「相川二上り甚句」と呼ばれていたが、終戦後に「佐渡甚句」と改めた。曲調には「おけさ」や「相川音頭」の節が加味されており、下の句を反復して歌うのが特徴である。歌詞は独特のものがほとんどなく「おけさ」のものを転用している。
「佐渡甚句」『新潟県の民謡』
(小山直嗣・編著、野島出版、1977年)
[…] 古くは「相川二上り甚句、さし踊り」といった。曲調には「おけさ」が加味されている。下の句を反復して歌うのが特徴で歌詞は、甚句独特のものがほとんどなく「おけさ唄」のものを転用している。いずれも元唄は「都々逸」から取入れられたものが多い。踊りは「おけさ」や「音頭」と異り右廻りに進み、平易で踊りやすい。
『佐渡相川の歴史 資料集 9 (相川の民俗 2 口承文芸編)』
(相川町史編纂委員会、相川町、1981年)
1931年にパテートーキーの第19番として発売された一作。フィルムの長さは60mで、16コマ毎秒換算で3分10秒ほど。定点からワンショットで撮影されており、冒頭のタイトル部を除くと文字情報は含まれていませんでした。
統一した衣装に身を包んだ5人の男性が、佐渡をイメージした背景(松のある浜辺と海原)を前に右回りで回っていきます。音楽としては6拍子。主旋律が4拍で、1拍目に手を左に払い、2拍目で両手を正面に上げ、3拍目で今度は手を右手に払うと4拍目でまた正面に戻します。この後「ハァーシャンシャン」と2拍の合いの手(囃子)が入るのですが、5拍目に両手を腰の後ろまで引き、最後の6拍目で全員が輪の中心に向けて一歩踏み出し、手のひらを顔の前でパン!と合わせます。この一連の動きを延々と繰り返していく内容です。
以前に童謡舞踊フィルム『夕やけ小やけ』紹介で触れたように、伴野商店はカタログ番号50番の『江差追分』以降、舞踊・ダンスの9.5ミリ映像化を積極的に進めており、1931年、新たに創設されたパテートーキーのカテゴリーで17番『佐渡おけさ踊』、19番『相川甚句踊』、20番『佐渡音頭踊』と複数のリリースを行っています。郷土文化の記録および継承が念頭に置かれているのでしょうが、それだけではなく音源と動画がシンクロする発想がこの時期まだ斬新で需要があったのだろうなと思います。トーキー時代に行われた様々な試行錯誤が姿形を変え、たとえば現在のミュージック・ビデオにつながっていくのだな、と。
[IMDb]
–
[Movie Walker]
–


