サイン館 フランス & ルイ・フイヤード [Louis Feuillade] より
モレノ（フェルナン・エルマン）とイルマ・ヴェップ（ミュジドラ）
1886年巴里生まれ。若き頃より俳優業こそ天職と誓う。小劇場にて端役を務めた後に国立高等音楽・舞踊学校（コンセルヴァトワール）に入学しシャルル・ル・バルギ氏の下で学ぶ。1907年、同校卒業時のコンテストでは喜劇部門で一位、悲劇部門で二位の成績を収める。オデオン座と契約し二年の間古典劇を演じ、次いでサラ・ベルナール劇場付きとなり名女優サラと共に幾度か舞台に立つ。その後（当時まだサンクトペテルブルグと呼ばれていた）ペトログラードのミシェル劇場に立ち、1913年にはギムナーズ劇場に戻ってきた。
映画人のキャリアもこの時に始まっている。ルイ・フイヤード監督作品で映画デビューを果たしたのである。
「フェルナン・エルマン」
シネ・プル・トゥス誌 1921年11月18日付号
Né à Paris le 21 février 1886, Fermand Herrmann se sentit dès sa jeunesse la vocation d’acteur. Après s’être essayé à de petits rôles, dans divers petits théâtres, il entrait au Conservatoire où il suit les cours de M. Le Bargy ; il obtint en 1907, à sa sortie du Conservatoire, un premier prix de comédie et un seond de tragédie. Engagé à l’Odéon, où il joua pendant deux ans les classiques, puis au théâtre Sarah-Bernhardt, où il eut à plusieurs reprises l’occasion de jouer aux côtés de la grande Sarah, il parut ensuite au théâtre Michel de Pétrograd – alors Saint-Pétersbourg – pour revenir, en 1913, à Paris, au théâtre du Gymnase.
Sa carrière cinématographique commence à ce moment. C’est sous la direction de Louis Feuillade, que débute Hermann.
Fernand Herrmann
Ciné pour tous, le 18 novembre 1921
『レ・ヴァンピール』の中盤、第3章「赤い暗号文」から第7章「サタナス」にかけての流れの見事さ、ギアの上げ方の巧みさは良く知られています。その原動力となっているのはイルマ・ヴェップ（ミュジドラ）の存在感で、古くから多くの愛好家が讃辞を送り続けてきたものです。
今回紹介するのは活劇中盤でその彼女と行動を共にしていく悪漢・モレノを演じたフェルナン・エルマン氏のサイン入り絵葉書です。
フイヤード初期作の俳優の大半がそうだったように、エルマン氏もまた舞台経由で映画界に参入してきた一人でした。コンセルヴァトワールをトップクラスの成績で卒業、オデオン座～サラベルナール座を経て、一度ロシアの劇場（ミシェル帝国劇場）に移った後に帰国しギムナーズ劇場と契約。この途上で『ギーズ公の暗殺』を監督したシャルル・ル・バルギ、『ジゴマ』のアルキリエールらと接点を持ち、モンナ・デルザやアンドレ・パスカルなど初期映画に縁のある女優と共演しています。
初めての映画出演となったのがフイヤード監督の1911年作『トラスト』。以後、同監督が亡くなる直前（1924年）まで常連俳優として活躍。
フイヤード監督が亡くなった後も幾つかの映画に出演、その後自身の名を冠した一座を組んでフランス各地を巡業します。映画界からの離脱は一時的とアナウンスされていたのですが結局銀幕に戻ることはなく、1925～28年頃の地方紙の記事を最後に役者としての記録が途絶えています。
外見や演技スタイルで強く自己主張するタイプではなく、個性派・曲者揃いのフイヤード一座では印象に残りにくい俳優さんです。キャラの薄さは武器でもあって、善の立場、悪の立場、どちらでもない部外者の立場を分け隔てなく演じる万能タイプのバイプレイヤーとして重宝されていました。『バラバス』から『パリゼット』の辺りでは存在感を増しており、今後フイヤード中～後期作品（1919～24年）が再評価されていく途上で名前と顔を見かける機会が出てくると思います。
[IMDb]
Fernand Herrmann
[Movie Walker]
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