1910年頃 – 独ウンガー&ホフマン社 幻灯機 「ズリーニ」

c1910 Magic Lantern “Zrini” by Unger & Hoffmann A. G. (Dresden)

1910年頃にドイツで製造販売された幻灯機「ズリーニ」。

幅14センチ、レンズを含めた奥行き43センチ、高さは29cm。ロシア鉄と真鍮で出来ています。レンズは150ミリでカバーを上側に開くタイプでした。本体左右に扉がついておりそれぞれに真鍮製の円いのぞき窓があります。光源となるアークランプは欠品。背後にカバーが無く、暗幕をかけて光を遮る構造でした。

左:ウンガー&ホフマン社の「アポロ乾板」の広告(1906年)と
右:35ミリ映写機の広告(1911年)

この幻灯機を手がけたのはドレスデンのウンガー&ホフマン社(Unger & Hoffmann)。1878年設立、写真撮影用の乾板(「アポロ乾板」)の開発技術に早くから定評がありました。その後顕微鏡やレントゲン、35ミリ映写機に事業を拡大。1900年から自社オリジナルの幻灯機用グラススライド(8.3センチ四方)の市販を開始し、それに対応した幻灯機も販売しています。1903年に株式会社に改編され、1920年代中盤に一部業務を他社(ミモザ株式会社)に譲渡し1928年頃に活動を停止しています。

19世紀末から20世紀初頭のドレスデンは光学機器メーカーの一大拠点となっていて、後にツァイス・イコンへと統合されていくICA社、エルヌマン社を筆頭にミューラー&ヴェツィッヒ社等多くのメーカーがその技術を競合していました。ウンガー&ホフマン社もこの隆盛を担った一翼。「ズリーニ」に関してはほとんど情報が残っていないのですが北オランダのフリースラント博物館に所蔵記録がありました。本体下部に排熱用の穴がない、本体正面上部に社名入りのプレートが留められているなどデザイン違いの一台です。

今回幻灯機を入手したのは仏パテ・フレール社製のクロノプロジェクター「ランフォルセ」のランプハウスに転用するためです。半月ほど前に米ボシュロム社の幻灯機を購入し支払いを済ませたものの、出荷段階で「国外発送できません」の連絡があり発注をキャンセルされました。深追いはせず、ドイツで売られていたこのズリーニに変更して無事届けてもらうことができました。

フィルムを受けるパーツもすでに入手済み。全体を組むと幅40センチ、奥行き80センチ程のスペースが必要になります。台をどうするか思案中で、古いミシン台の鉄製足組+木製天板がサイズ的にちょうど(90×40センチ位)なので次はそちらを確保して位置決めをしていく予定。夏には実写までこぎつけることができそうです。