1930年代後半 アルマ・モトカメラ 9.5ミリ動画撮影機 w/ プルミエール・アナスティグマート F=2.8

撮影機館 より

c1938 Japanese Alma 9.5mm Movie Camera
w/ Premier Anastigmat F=2.8

日本9.5ミリ小型映画史の終わりがけとなる1938年頃に市販された国産アルマ・ブランドの9.5ミリ動画撮影機。

本体のシリアル番号は「1274」。サイズは奥行120×幅72×高さ125、パテ社のモトカメラと比べても一回り大きくずっしりしています。手回しのゼンマイ式で三速(8/16/64コマ毎秒)に対応しています。

レンズフードと黄色のシャープカットフィルターが付属。外すとレンズ本体が出てきます。製造メーカーは不詳ながらプルミエール・アナスティグマートF=2.8の銘があって、レンズ自体のシリアル番号は「22484」となっていました。

独シーメンス社の16ミリ用動画カメラB型
(The Kodak Collection at the National Media Museum, Bradford)

アルマ・モトカメラは1933年に市販された独シーメンス社の16ミリ用動画カメラB型のコピー機でサイズ的にも同機と同じ。シーメンスB型は通常のファインダーとは別に、上から覗きこむウエストレベルファインダーが併設されているのですが、アルマ映写機はこの反射式ファインダーが付いていない以外、素材の質感を含めほぼ完全にコピーしています。

アルマ・ブランド撮影機と映写機の広告
左から順に『海』誌1938年9月号、1940年『明日の世界文化』、『保育』誌1940年1月号

1930年代末~40年の雑誌広告より。伴野貿易株式会社による広告で、留意すべきはあくまでも「発売元」として宣伝を打っています。以前に紹介したアルマ映写機(英パテスコープ社製のコピー)やエクラ映写機(仏パテルーラルのコピー)についても同様で、この辺は「製造元」を明記しない方針を徹底しています。

ちなみにエクラ映写機に関しては伴野貿易と明治貿易という二つの会社が「発売」を取り扱った記録が残っています。光学機器メーカーでもない貿易会社、しかも別会社がなぜ同一の「国産」映写機を発売しているのか…社内に小型映画の愛好家がいて、別事業展開として映写機や撮影機の開発に乗り出した…だけでは説明できない謎が残ります [1] 。国外製品の特許権問題をクリアしないまま開発を進めていたコピー製品(=厳密な意味で設計した日本人担当者はいない)ですし、リスクヘッジで意図的に製造社名をボカしたのではないかと考えています。


脚注

[1] 国立映画アーカイヴによる「映画遺産」のホームページはアルマ映写機エクラ映写機共に製造を「明治貿易(販売)」としており、製造社名が不明である事実を考慮しています。一方おもちゃ映画ミュージアムの方ではアルマ映写機の製造を「アルマ」と記載。1930年代後半~40年頃の年鑑(1935年度版『電気年鑑』や1940年度版の『全国工場通覧』など)で確認できるかぎり映写機製造をしている「アルマ」という会社が存在していた記録はありません(ファスナーを製造していた「合資会社アルマ商店」が大阪の天王寺にあるのみ)。