1929年頃 齣フィルム『時代劇マーク大会(大乱闘劇・大猛闘劇)』5冊254枚

1929年 齣フィルム『時代劇マーク大会(大乱闘劇・大猛闘劇)』
元々35ミリフィルムはコレクション対象から外しておりいわゆる「齣フィルム」も手元にありませんでした。ところが先日まとまった未使用の束が売られており、今回手に入れてみることにしました。

厳密な意味の「齣フィルム」は映写で実使用された35ミリフィルムをぶつ切りにして市販したり駄菓子屋の景品として扱ったりしたものでした。そういった古い「齣フィルム」のコレクションを見ていると、作品名と主役俳優を前に出したポスター風のフィルムが時折混じっています。あれは何だろうと常々思っていたのですが、どうやら当時(少なくとも業者から)「マーク」と呼ばれていた物に当たるようです。

1929年 『時代劇マーク大会』包み紙1929年 『時代劇マーク大会』フィルム
こちらは無声映画の有名時代劇の「マーク」が当たる駄菓子屋の引き物です。全く手つかずの状態で50枚を一束にした同じロットが5つありました。一つ一つが雑誌の紙を折って糊付けした袋に入っており、なおかつチラシも兼ねた小さな紙片にくるまれて中が見えないようになっています。後に触れる理由から1929年に制作されたものと推測され、1927~28年頃に公開された時代劇が中心となっています。

扱っている作品は河部五郎、大河内伝次郎、阪東妻三郎、林長二郎、市川百々乃助の5人の俳優の主演作のみ。

全ての袋を空けて(後で全部戻しました)統計を取った所、興味深い分析結果がでてきました。

1)各束に1つずつ、フィルムが2枚入った「当たり」がある(そのため合計枚数が250枚より多い)
2)俳優にもレア度があって、河部五郎が一番レア度が低く、市川百々乃助と林長二郎のレア度が高い
3)各俳優ごとの出演作でも出現率に濃淡があり、繰り返し出てくる作品と滅多に出てこない作品がある
4)タイトルやデザインに厨二病的な雰囲気があるものはレア度が高い

河部五郎主演『鬼傑の叫び』
河部五郎主演『鬼傑の叫び』
大河内伝次郎主演『血煙り高田馬場』
大河内伝次郎主演『血煙り高田馬場』
阪東妻三郎主演『血染めの十字架』
阪東妻三郎主演『血染めの十字架』
阪東妻三郎主演『阪本龍馬』
阪東妻三郎主演『阪本龍馬』
市川百々乃助主演『怪兇刄』
市川百々乃助主演『怪兇刄』
林長二郎主演『乱軍』
林長二郎主演『乱軍』
林長二郎主演『かゞり火』
林長二郎主演『かゞり火』

『鬼傑の叫び』はこのデザインで2枚含まれていて(出現率0.8%)、残りの5種は1枚ずつしか出てきませんでした。出現率0.4%はなかなかシビアな数字で幼い子供の射幸心を煽りたてています。

フィルムを個包装していた小袋は1929年『婦女界』2月号を再利用しています。コスト面からわざわざ雑誌を買ったとは考えにくく、手元にあった雑誌を流用したと思われます。当時の女性が行っていた内職の一つだったのではないでしょうか。

フィルム全てのスキャン画像と分析データは後日別記事で掲載する予定です。


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