1922 – 『ユーコンの危難』(J・P・マクゴワン他監督、ユニヴァーサル社) 1924年 榎本書店・キネマ文庫

情報館・ノベリゼーション [日本]より

Perils of the Yukon (1922, Universal Film Manufacturing Company, dir/J.P. McGowan) 1924 Enomoto Shoten Novelisation “Collection Kinema”

1867年のアラスカ。英国から開拓にやってきた青年ジャック・メリルはロシア人のうら若き乙女オルガと恋に落ちる。女もまたその思いに応え、二人は程なく式を挙げる次第と相成った。二人の幸せな様子を快く思っていなかったのが地元の一青年イワンであった。オルガへの報われない恋心を逆恨みしあの手この手を駆使し婚姻を妨げようとしていく。イワンの配下に囚われたジャック青年は川流しの刑にされ、原住民の住む川下で時間を取られていた。ようやくオルガの元に戻った日には時遅く、待ちわびたオルガはイワンのプロポーズを受け入れその妻になっていたのであった。

32年の時が経過。かつて失意の内に去ったジャックの息子がアラスカを訪れていた。ある夜、金鉱を発見した夢を見ながらホテルのベッドでウトウトしていると警鐘の音が聞こえた。火元は隣の民家で、逃げ遅れた父と娘が2階の窓で助けを求めている。何とかしないと。青年は目についた綱を使って親子の救出を試みる。白髪の男性がかつての父の恋敵イワンであり、女性が早世したオルガの一粒種であるとは知る由はなかった。

金鉱の地図を巡り地元の悪漢が暗躍する中、青年はかつての父の無念を晴らすことができるのか。暴雪と狼の待ち構える極寒の地、運命の歯車の行く末や如何に。

ゴールドラッシュに沸くアラスカを舞台とした15章物の連続劇『ユーコンの危難』の日本語小説版。1860/1890年代の2つの時代、2世代にまたがる因縁の物語を描いていきます。主演はウィリアム・デスモンド&ローラ・ラ・プラント。冒頭に一葉写真が挿入されているのですが、ヒロイン・オルガ役のローラ・ラ・プラントではなく誤ってルース・ローランドになっていました。

デスモンドは1910年代にトライアングル社で活躍、同社解消後に自身の名を冠したプロダクションを設立、アクション派に転向し西部劇での主役を歴任。同氏の人気に注目したユニヴァーサル社と契約、第一弾作品『ユーコンの危難』を皮切りに1920年代善前半に花形俳優へと成長していきました。ローラ・ラ・プラントとの相性が良かったようで、次作(連続劇ではない単発物)『18日間世界一周』で再度顔あわせ。同作は榎本書店の活動文庫で日本語化されています。

本作は複数の監督による分業スタイルを取っており、その内の一人がJ・P・マクゴワンでした。同氏は1910年代初頭にカレム映画社を支えた実力派で、これまで本サイトで紹介したスーパー8『若き女電信技手の勇猛』(1912年)、9.5ミリ『ヘレン・ホームズの花嫁争奪戦』(1914年)が彼の手によるものです。連続活劇に興味ある方なら頭の片隅に留めておいて損のない名前だと思います。

『ユーコンの危難』はベルギーのブリュッセル映画博物館に唯一の現存プリントが確認されています。オリジナル公開から一世紀を経た2022年6月30日に上映記録あり。

[IMDb]
Perils of the Yukon

[Movie Walker]
ユーコンの危難


[著者]
磯山夕陽

[発行所]
榎本書店

[印刷所]
榎本法令館印刷工場

[フォーマット]
14.5 × 10.5 cm、キネマ文庫

[出版年]
1924年