絵葉書と『演劇生活 Színházi Élet』誌から見る
1910年代ハンガリー映画(08)
ハンガリー初の長編映画とされる1913年作品『最後のボヘミアン』(Az utolsó bohém)で主人公ヴェール・トーニを演じたのがハンガリー劇壇の重鎮ニャーライ・アンタルでした。以前紹介したベレギ・オスカー・Sr.(1870年代生まれ)の一つ上の世代に当たっていて、ハンガリーで映画産業が本格始動した際にはすでに憑依系の演技で知られるベテラン俳優の評価を得ていました。
「演劇生活(Színházi Élet)」誌 1914年3月29日-4月5日付第13号
『黄金を求むる男』紹介ページ
ニャーライ・アンタルにとって映画出演第2作となったのがケルテース・ミハーイ監督による『黄金を求むる男』(Az aranyásó、1914年)でした。ゴールドラッシュに沸く19世紀のカリフォルニアを舞台にした作品で、砂金採掘事業に失敗し飲んだくれとなっていた主人公ジャックが、道端で倒れているところを女性教師メアリー(アランカ・モルナー)に救われ二人は恋に落ちるも…の展開を取っていきます。
目先の金に目が眩んだり(『最後のボヘミアン』)、アルコールに溺れ自分の愛する人を大事にできなかったり(『黄金を求むる男』)、ニャーライ・アンタルの演じた役柄は人間の心の弱い部分に焦点を当てたもの。熱量の高い演技派として知られていた同氏が本領を発揮できる役柄だったのだと思われます。
1920年初頭、当時欧州で流行していたスペイン熱に罹患。日刊紙で死去の知らせが先走って報道されてものの誤報と判明、しかしその後衰弱に耐え切れず2月27日に亡くなっています。出演した5つの映画作品に関しては現時点で現存が確認されておりません。
[IMDb]
Antal Nyáray
[Hangosfilm]
Nyárai Antal