1917 – キネマ・レコード 大正6年6月15日付通巻第48号(表紙エミリー・サンノム)

雑誌 [和書] より

Kinema Record (Vol. V., No.48) 1917 June the 15th Issue

大正6年(1917年)6月15日付のキネマ・レコード誌通巻第48号。サイズは縦26.3×横19.0センチでページ数は46。表紙を飾っているのはデンマークの活劇女優として人気を博したエミリー・サンノム。国書刊行会による2000年の復刻版では第2期の第3分冊に収録されています。

巻頭グラビアを飾るのはヴァイオレット・マースロー、ネヴァ・ガーヴァー、マーガリータ・フィッシャー、イタリア女優陣(メニケリ、レダ・ジス、ベルティーニ、ボレリ)らの女優陣、ハーバート・ローリンソンやジャック・ウォーレン・ケリガンら男優陣。

キネマ・レコード誌は網羅的データベース指向を備えつつ、国内の活動愛好家の嗜好を忠実に反映した誌面作りを行っていました。1910年代初頭には『ジゴマ』や『プロテア』、さらにはSCAGL系の文芸作品を含め仏作品に重点を置いた編集を行い、1912~13年頃にドイツ探偵映画のブームが起こるとそちらの紹介にシフトしていきます。1910年代中盤になるとハリウッド作品の比重が増加。今回紹介する1917年6月15日号ではパール・ホワイト活劇の衝撃(1915~16年)が一旦落ち着いて、後を追うように登場してきた次世代の連続活劇俳優(グレース・カナード、ネヴァ・ガーヴァー、ルース・ローランド)が注目を集めていた様子が伝わってきます。

各国映画界の最新情報や地方での配給状況が伝えられている一方、監督論(水澤武彦氏によるレイモンド・ウェルズ論)や俳優紹介(嵐橘樂)の企画も充実。

『赤環』の紹介で名が知られるようになったバルボア社の特集が組まれており、その流れで『赤環』に執事役で出演していた在米邦人俳優・井野口誠氏に一頁割かれていました。同氏に関しては1919年の『世界活動写真俳優名鑑』で数行の紹介を読むことが出来ます

ユニヴァーサル〜トライアングル社で活躍したレイモンド・ウェルズにせよ、日活関西撮影所に所属していた嵐橘樂にせよ現在では取り上げられる機会の少ない映画人。井野口誠氏についても現在オンライン(映画関連サイトやSNS)で言及している人は見つかりませんでした。見失われている初期映画の風景がまだいたる所にあって、パラパラとページをめくっているとその断片がフッと浮かび上がって消えていく感じ。こういったかけらを辛抱強く集め、点と点を結びつけて線にし、線と線を織りなして面にしていく作業が要求されているのでしょうね。

[発行所]
キネマ・レコード社

[発行]
大正6年(1917年)6月15日

[定価]
三十三銭

[フォーマット]
26.3×19.0cm、46頁