モーナ・モルテンスン Mona Mårtenson (1902 – 1956) スウェーデン

サイン館・北欧諸国 [Nordic Countries] より

Mona Mårtenson
Late 1920s Autographed Postcard

1929年の『ライラ』の主人公役で知られたスウェーデンの女優さん。

1920年代初頭にデビューし2作目の『イエスタ・ベルリングのサガ』で準ヒロイン役エッバ・ドーナに抜擢。義理の姉役を演じたグレタ・ガルボのように国際的知名度を得るには至らなかったものの、実力派の若手女優としてグスタフ・モランデル作品(『イングマール家の遺産』)やジョン・W・ブリュニウス作品( 『カール12世』)で着実にキャリアを積み上げていきます。

『ライラ』(1929年)

彼女にとって転機となったのが 『ライラ』でした。母国スウェーデンではなくノルウェーで製作された一作で、監督はドライヤー監督初期作(『あるじ』や『サタンの書の一頁』など)の撮影を務めたゲオー・スネーフォート。ノルウェー人と先住民族女性ライラとの恋愛を軸にした物語で、美しい雪景色、脇役俳優陣の的確なサポート、そして主演モーナさんの内面から輝く演技によって高い評価を獲得しています。

とはいえ『ライラ』が知られるようになったのは比較的最近の話。ドライヤー作品に触れているとカメラマンとしてスネーフォートの名は時々出てくるものの、監督として着目される機会はそれまでほとんどありませんでした。状況が変わったのが2011年春、米フリッカー・アレイ社によるDVDリリース、英語字幕付きのデジタル版で認知が一気に進みました。

ちょうどこの時期(東北大震災の前後位です)、国外参加者の多いオンライン映画コミュニティーに日参してたこともあって当時の驚き、騒然とした空気はよく覚えています。あの時、普段サイレント映画はほとんど見ない層を多く巻きこんで「こんな面白い作品があったのか」と盛り上がっていたものです。

無声映画に限らずホラーやアニメ等でも同じことで、ある程度作品数をこなしジャンル内の約束事を踏まえた上でより楽しめる作品と、入門者にも分かりやすい作品があるとして、両者を分けるとするなら『ライラ』は後者に位置しています。新味や深みがある訳ではないものの、紛れの少ない、見せ場のはっきりした物語を役者やスタッフが丁寧に仕上げていった一作。とっくの昔に名が知られていておかしくなかったにも関わらず、歴史の綾で見過ごされていた本作を見つけ出してきたフリッカー・アレイ社の炯眼も評価されてしかるべきと思われます。

『凸凹珍従軍日記』(1931年)

『ライラ』の姉妹作『エスキモー』(1930年)に出演後、デンマークの喜劇ユニット、フュー&ビ主演の『凸凹珍従軍日記』(1931年)に客演。余裕のあるゆったりした明るい演技が作品の雰囲気とよくあっており喜劇女優としての魅力を十分に発揮していました。トーキー時代に幾つかの主演作が残されていますが脇役に回る機会も多くなり1940年代中盤には女優業から離れています。

[IMDb]
Mona Mårtenson

[Movie Walker]