9.5ミリフィルム&パテベビー関連資料 より
薄手の紙に印刷された日本語の9.5ミリフィルム解説。サイズがやや大きく26.8×38.5センチほどあります。







「其一」は片面印刷で23作を紹介。内9本が仏パテ社製、残り14本が英パテスコープ社製フィルムです。「其二」は両面印刷で30作を紹介。内13本が仏パテ社製、17本が英パテスコープ社製フィルムでした。最後の「其三」は片面で7作のみの紹介。3本が仏パテ社で、4本が英パテスコープ社。
其一から其三で紹介されたのは60作。25作が仏パテ社で35作が英パテスコープ社になります。仏パテ社製に劇映画は含まれておらず、科学・地誌・産業を扱った作品とアニメ(フェリックス)が中心となっていました。英パテスコープ社は喜劇とドラマが中心のラインナップです。
日本語による9.5ミリフィルム解説としては、個人愛好家の手による1『パテーベビーフヰルム解説書』(大正15年)があります。仏パテ社の初期の9.5ミリフィルムを網羅的に扱った力作ながら誤りが多く、また読みやすいとは言えない文章でした。今回入手した三枚の紙資料は言葉の選び方や説明の仕方が丁寧で、フィルムの長さやおすすめポイントも明記してあるなど販促用としてしっかりした内容になっています。作成者が明記されていないものの、伴野商店あるいはそれに類する取次店が制作したと思われます。
また作品の連番に注目してみると、仏パテ作品は705~1072(1924年12月~26年6・7月発売)、英パテスコープ作品は10001~10066(1926年1月~3月発売)と一定の時期に集中。1926年10月に発売された英パテスコープ社10072番(『Fire!Fire!』)や仏パテ社作品1095番(『鐵の製法』)は紹介に含まれていません。タイムラグを考えてもこれらの解説書も大正15年/昭和元年(1926年)後半に流通していたと見て良いと考えられます。
興味深いことに伴野商店の市販していた「和物」は一作も含まれていません。まだ伴野社が日本物のオリジナルを出す以前の資料になるのかな、と。
以前に少し触れたように、筆者が所有している伴野社のオリジナル作品リストは1929年以降のもので、最初期の作品に欠番が多く見られます。欠番を埋めるフィルムそのものは見つかっているのですが、正式な発売時期までは分かっていないのが現状です。この内『陸の人魚』については内容の分析から映画公開時(1926年9月)と同時期だったのではないか、の仮説を提示しておきました。今回の紙資料はその仮説を裏付けるものです。
