小人症映画小史(06)
「小人症映画小史」は戦前期の身体/障碍/表現をめぐる小特集で厳密には対象外なのですが、折角の機会ですので『アリスの落ちた穴の中』もご紹介。
アリスを演ずるのはマメ山田氏。現在でも折に触れ上映されている作品ですので粗筋紹介などは割愛。実際に見てもらうのが一番だと思います。
DVDは2011年にペヨトル工房から出されたもので廉価版と豪華版の2パターンありました。自分が購入したのは廉価版で元々は厚手の特製茶封筒入り+コレクションカード付。封筒をどこかにやってしまっていて、その代わりに2010~11年に寺嶋監督の作品上映会が開かれた際のパンフレットやフライヤー類をセットにして置いてあります。
ちょうどこの時期(2011年頃)寺嶋監督は自身のHP経由で『作品集 Vol.1&2』を販売していました。スクリーンショットからでも優れた作品集だと分かったのでためらわずに購入。すると翌日監督本人からお電話がありました。「勝手に複製してネットで頒布したりしないで下さいね」。その後送られてきたDVD-Rは丁寧な直筆メッセージ付き。電話、手書きメッセージどちらからも自身の作品をとても大事にしている、そして大事にしてほしいと願っている様子が伝わってきました。


収録作は以下の通り:
【Vol.1】
「夜の公園・白薔薇」(1997年 11分)
「姫ころがし」(1999年 35分)
「夢のとりで」(1991年 19分)
「初恋」(1989年 20分)
【Vol.2】
「幻花」(1990年 35分)
「エリスの涙」(2003年 15分)
「緑虫」(1991年 41分)
光に対する特異な理解力と、淡い物語性とを力技で両立させている凄まじい作品が並びます。
ちなみに2016年の自虐系コメディ『宙ブラ女モヤモヤ日記~ダンナに言えない秘密~』も傑作で、イメージフォーラムで腹を抱えて笑いながら見た覚えがあります。上映が終わってから退出しようと動き始めた時、最後部の薄暗がりに寺嶋監督が立っているのに気づきました。自身の作品を見がてら客席の反応をウォッチしていたようです。
21世紀日本で最良の映像作家がなかなか自由に作品を撮れない邦画界の現状ってどうなんでしょうね。
[IMDb]
Alice in the Underworld
[Movie Walker]
–
関連記事
- 小人症映画小史(01):『小人たちの王国 対 巨人国の王ギガス』 (1914年、フェルディナン・ゼッカ監督)
- 小人症映画小史(02):『三人』 (1925年、トッド・ブラウンニング監督)
- 小人症映画小史(03):ラヴィニア・ウォーレン Lavinia Warren (1842 – 1919) 米 & プリモ・マグリ伯爵
- 小人症映画小史(04):デルファン・シルヴォー 1901年の直筆入り鶏卵写真と『小人』(1912年、ルイ・フイヤード監督)
- 小人症映画小史(05):ルートヴィヒ・ユテル(1889 – 1941) ある小人症―家の物語
- 小人症映画小史(06):『アリスの落ちた穴の中 The Dark Märchen Show!!』(2009年、寺嶋真里監督)
- 小人症映画小史(07): 『小さな曲芸師』 1923年仏パテ社9.5mmプリント
- 小人症映画小史(08): マルヴァル (生没年未詳)





