小人症映画小史 より
戦前期のフランス映画界で、デルファンと並ぶ先駆者の役割を果たした小人症俳優がマルヴァルでした。1900年代の終わりがけにすでに舞台での活動を始めていた記録が残っています。デルファンと異なり、映画界と接点を持ち始めたのは遅く1920年代になってから。確認できる限り、映画俳優としてのデビュー作はジャン・ルノワール監督の『城下町の血闘』(1928年)でした。
同作では宮廷道化師アントニオを好演。シリアスな性格俳優指向だったデルファンに対し、マルヴァルは元々道化師の属性を強く打ち出しており、映画初出演でも物怖じした様子のない堂々たる役者ぶり。ルノワールの才知も十分に発揮された演出です。
またマルヴァルの名はブニュエルの『黄金時代』にもクレジットされています。作品の後半部、怒り狂った主人公の「男」が手当たり次第に部屋の窓から物を投げ捨てていく場面。突き落とされる司教役で登場していたのがマルヴァルだったそうです。
1930年にはマルコ・ド・ガスティーヌ監督の『麗しの悪女』に出演(IMDb等には未登録)。『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』のジュヌヴォワがサーカス団の一員として出演、同僚と踊りの練習をしている場面で前を横切っていくのがマルヴァルです。ダンス場面に目を凝らしているとマルヴァルが写りこんでくる構図を狙って撮ったものです。


生没年や本名、出生地については未詳。唯一、1910年代に小人症芸人の女性と結婚し「マルヴァル夫妻」として活動していたことが知られています。「夫人」として紹介されているのはパリ出身のリリィ・ワルトン(Lilli Walton)。これまで何度か名前を挙げてきた1909年のイベント・リリパット小人王国にも出演していたベテラン芸人です。
[IMDb]
Marval
[Movie Walker]
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