小人症映画小史 より
『アリスの落ちた穴の中 Dark Märchen Show!!』(2009年)と『宙ブラ女モヤモヤ日記~ダンナに言えない秘密~』(2016年)の間に位置する短編で、画廊・喫茶Zaroff(ザロフ)の3周年記念企画として製作され、上映・販売されていた一枚。
作品は大きく4つの流れで構成されています。
1:モノクロ) 理科室で赤点の解答用紙を前に少女(風間あまね)が教師(御茶漬海苔)に詰め寄られている。回想の中では幼稚園児(マメ山田)に追われている。美術室に足を運んだ少女の前に人形を抱えた美術教師(安蘭)が姿を見せる
2:カラー) 人形を手にした少女。気がつくと秘教的な振る舞いを見せる3人(安蘭、岸田尚、本原章一)に囲まれている
3:モノクロ)先程と立場が変わり、怯えた幼稚園児を少女が追っていく
4:カラー)理科室では亀甲縛りにされた教師がコオロギに食まれながら苦悶の表情を見せる
自らの環境にストレスを感じている主人公がお気に入りの場所・もの・ひとを通じて別世界に紛れこみ、ある種の通過儀礼を経て自らを更新し、自分を取り巻く力関係を逆転させていく…一義的、直線的な理解を要求する作品ではないとはいえ、教養小説(ビルドゥングスロマン)の型をゆるやかになぞっていると分かります。
マメ山田氏は『アリスの落ちた穴の中』に続く出演。前半及び後半のモノクロ場面に登場し幼少期の心の傷や怖れを体現する園児姿を披露していました。
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戦前~戦中期の邦画史に小人症の演者の姿はありません。
俳優として認知されるようになったのは戦後、1960年代になってからでした。先駆者となったのは日野利彦氏。『赤い殺意』(今村昌平、1964年)を突破点に映画界に参入、『一寸法師を記述する試み』(寺山修司、1977年)や『追悼のざわめき』(松井良彦、1988年)、『ザ・ギニーピッグ2 ノートルダムのアンドロイド』(倉本和比人、1988年)といった重要作に出演。マメ山田氏とは舞台で何度か共演(『唐版滝の白糸』、唐十郎作、1983年など)しています。
寺嶋監督はゴスロリ寄り、例えばペヨトル工房&『夜想』界隈と言って良い耽美系の映像作家として評価されています。実際『つつがなき遊戯の秘蹟』もそういった一作ではあるのですが、同時に上に名を挙げた表現者たちの流れを汲み、身体をめぐる小さな映画史を独自に推し進めた点で特筆すべき存在となっています。
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