「綺乃 九五式」開発記録 04e – レンズの違いがもたらす画質の差異について

Metropolis 9.5mm Trailer Sample (Tamron50mm)
タムロン21H 50mm + 15mm接写リング F=4、0.43倍での撮影)
ランプはLED10Wで6000K、ディフューザーは光源寄り
明るさとコントラストをやや強めに加工
2019年9月14日
Metropolis 9.5mm Trailer Sample (VS-MC35)
ヴァイタル・ヴィジョン VS-MC35 35mm
(0.26x~0.65xマクロレンズ、絞りは開放固定、約0.4倍での撮影)
ランプはLED10Wで6000K、ディフューザーはフィルム寄り
2019年9月3日

カメラ及びレンズの設定についても幾つかテストをしてみました。

上の写真が9月14日のタムロン50mm+接写リングでの試写。絞りを変えたりLED電球を換えたり(6000k/3000k)しながら撮った一枚です。下は9月3日にヴァイタル・ヴィジョン社の35mmマクロレンズで撮ったもの。同一フレームではありませんが表現の個性は出ています。

【タムロン21H 50mm + 15mm接写リング(F=8)】
・シャープな画像(文字の輪郭もはっきり出ている)
・粒子感が強く、またフィルム表面のゴミや傷を拾いやすい
・これ以上絞りを開くとピントの合わない部分が出てくる。またこれ以上絞ると解像度が落ちてピンボケした感じになる

【ヴァイタル・ヴィジョンVS-MC35(F=開放)】
・ソフトな画像
・白がやや強めで、細かな陰影が飛んでいる
・ピンボケと滲み感あり(絞りは開放固定でこれ以上絞れない)

プリクラやスマホアプリの美白加工に馴れた目にはソフトなVS-MC35が綺麗に見えるかも。でもこれは8ミリ白黒の質感ですよね。モノクロ9.5ミリの細密さに忠実なのはタムロン21Hだと思います。

VS-MC35も決して悪い訳ではないので次回連続撮影~動画作成までテストをした時にもう一度比べてみます。

「綺乃 九五式」開発記録 05c – 仮組み&モーター試運転

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この一週間で大まかな配置を決定して仮組みを行いました。土台は40×30センチで映写機、モーター、モーター用変圧器、Arduino、カメラ&カメラマウント用ステージ、ラズベリーパイを置くとほぼ一杯になります。

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この後カメラマウントを外し、フィルムをセットした状態でモーターのテストをしてみました。重たいフィルムは避けて小さな60m用リールを装填。ゆっくりフィルムが送られているのが分かるかと思います。

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フィルムが狭い場所を抜けていく部分が見つかったので修正しました。

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「綺乃 九五式」開発記録 04d – ディフューザーの作成

室内でストロボ・フラッシュ撮影を行う際、光を均一に対象に当てるため「ディフューザー」を使います。白い半透明のシートで、光源からの距離によって効果が変わるためカメラマンのこだわりポイントの一つになっています。

フィルムスキャナー自作派の一部にも同様の発想が見られます。

LED電球とフィルムの間に噛ませる形で、そこまで大きなものは必要ではありません。光源に近いとディフューザーの効果は弱くフィルム表面を忠実に照らすことができますが、例えば細かなごみや小さな傷まではっきり撮影されてしまいます。

一方でディフューザーをフィルムに寄せるとややソフトフォーカスした感じとなり、埃や傷をある程度隠すことができる一定の効果を見こむことができます。

フィルム表面の傷などは撮影後の画像修正で消すこともできます。ただフィルムスキャニングでは画像の枚数が多くなるため、それなら先に消してしまった方が良い、と考える訳です。

今回使う小さなサイズではすりガラスが好んで用いられています。

すりガラス型ディフューザー [エドモンド・オプティクス] 25×25ミリ 2300円

すりガラス [Plexiglas] 30×20ミリ 75人民元(1100円位)

必ずしもすりガラスである必要はなく乳白色で透光性のある素材なら代用もできるそうで:

・アクリル電飾看板に使われている乳白アクリル板を転用する
・白い紙を挟む

など様々な代案が試されていました。
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独マティウス・メルヒャー氏の自作テレシネ機で使用された
紙製ディフューザー(上)とサンプル動画(下)

乳白色のアクリル板であれば身の回りにも沢山ありそうです。百均で売られているアクリル製トレーも使えそう。今回は無印のアクリルボックスの仕切り壁を加工してディフューザー代わりにしてみました。

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タムロン50mmレンズ用のマウントがまだ届いていないため35mmのサブレンズで撮影したものです。画質的にまだまだですが光の拡散としてはこの程度で十分かなと。すりガラスも購入してみて比べてみたいと思っています。

[テスト] パテベビー映写機をArduino互換機×ステッピングモーターで動かす

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ステッピングモータのテストを兼ね、手回し型のパテベビー映写機にステッピングモーターを載せて動かしてみました。

準備したのはマイコンボード+ステッピングモーター+モータードライバのセット。モーターを動かす12V用の電源とジャンパー線は自前の物を使用しています。

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マイコンボードは中国製Arduino Uno互換機。USBポートの仕様(CH340)がオリジナルと異なっておりパソコンに認識されないため、「江苏沁恒股份有限公司」のHPからドライバ(CH340)をダウンロードしインストール。

デバイスマネージャーで確認すると「COM4」として認識されていました(手持ちの純正ArduinoはCOM3で使用)。

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PC上でArduino IDEを開いてツールからシリアルポート設定へと移動し、「COM4 (Arduino/Genuino Uno)」を選択すると動くようになりました。

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Arduino互換機の3番ピンを「PUL (パルス)」、4番ピンを「DIR(向き)」、6番を「ENA」に指定しテストプログラムを実行。

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モーターの固定にはパテ社純正のモーター用金具を使用(2か所ドリルで穴を開けました)。金属製ベルト2本を使うのが正式な繋ぎ方ですが時折空転を見せました。モーターの位置をずらし本体に直でベルトをつないでいます。

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「綺乃 九五式」開発記録 03c – ニッツォ映写機の加工(シャッター羽根とベルトホイールの取り外し)

映写機を改造してフィルムスキャナーに転用する際の難関の一つがシャッター羽根の取り外しです。

16~24コマ毎秒の映写ではちらつき(フリッカー)が発生するためシャッター羽根で明暗を交互させ、三枚羽根の場合は毎秒48~72回にまで明滅の頻度を上げると人の目が「ちらつきのない流れる映像」と認識するようになります。

テレシネ時に羽根が映りこんでしまうのは困ります。自力で取り外さなくてはいけません。

戦後の映写機のように羽根がしっかり組みこまれていて取り外しの効かないタイプだったり、手の届きにくい位置にあったりだと苦労します。ニッツォHS型はその点作りがシンプルで作業しやすかったです。

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1) 映写機パーツの背面。中にシャッター羽根が格納されています。

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2) 左上ネジを緩めるとカバーが20度ほど開きます。これ以上は開かない仕様でした。

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3) カバーの付け根にある二つのビスを外します。

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4) シャッター羽根がむき出しになります。

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5) 固定しているビスを外していきます。

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6) シャッター羽根を外すことができました。細い管が通っていて、注油した油がギアに流れるようになっています。油が届かない部分もあったため、清掃と注油を行います。

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7) 外した羽根は個別のシリアル入り。また何かの機会に戻す可能性があるのでビスと一緒に小袋に入れて保管します。

◇◇◇

次に金属製ベルトホイールを交換していきます。

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モーターからの動力を本体に伝える部分です。小さなマイナスネジで留めてあるので外していきます。

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外れました…が、ひどく錆びていて用意した5ミリ軸用の金具がはまりません。

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軸全体を研磨。

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幅11ミリ、20歯、軸径5ミリの金具(タイミングプーリー)を固定します。

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仮置きした状態。ステッピングモーターにも同サイズのタイミングプーリーを取り付けてあります。両者をベルト周50センチの歯付ゴムベルト(タイミングベルト)でつなげる予定です。

「キノグラフ」の特徴

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・2014年に公開された完全自作型のフィルム・デジタル化専用機
・開発・製作者はマシュー・エプラー(Mathew Epler)氏
・16ミリと35ミリに対応(8ミリは現在開発中)
・フィルムを横に寝かせた形で作業を行う
・アルミフレームとアクリルシート、3Dプリンタ由来のパーツでボディを組んでいる。水平垂直の微妙な調整を考慮し、本体の正面に顕微鏡を改造したカメラマウントを置き、デジタル一眼レフカメラを装着している
・駆動部分はArduinoを C++のオープン・フレイムワークスで動かしている
・製作費は本体1200ドル+カメラ2000ドル

作業手順としては:

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左から右へフィルムが一定の速度、間隔で送られていきます。

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本体正面に設置されたデジタル一眼レフカメラが自動撮影。その先にモニター代わりのパソコンが見えます。

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横倒しの形で撮影されます。

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フォルム送りの穴(パーフォレーション)とフレームの上下左右を自動検出しトリミングを行っていきます。

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実際にトリミングされた画像。

【感想】

2014年にオープンソースとして公開されたArduinoベースの完全自作機で、デザイン性と完成度の高さで知られています。

2007年に開発者マシュー氏が80本ほどの古いフィルムを見つけたことから始まったプロジェクトだそうです。現代テクノロジーを駆使してフィルムスキャナーを自作するとこの形になるのだろうと思います。画質も高く専門業者とほぼ遜色ない出来映え。

Vimeoにプロジェクト紹介の動画が投稿されていました。デジタル化した短いサンプル(1分53秒目から)を見ると、動画が小刻みに上下左右に揺れているのが分かります。先の写真にも「動画安定化機能はまだ作成中です(Note: image stabilization is still in development)」の註あり。

これはキノグラフだけでなく完全自作派のテレシネ機全般にいえる弱点です。緻密なプログラミングでフレームの上下左右をトリミングしていく訳ですが、それでも様々な要因が重なってコマごとに数ピクセル程度の誤差が出てしまうようです。小さなフィルムを拡大するとその誤差が拡大され、オリジナルフィルムにない「揺れ」が発生することになります。どうクリアするかが今後の課題かなと思われます。

キノグラフは公式HPを持ち、そのオンラインフォーラムはフィルムデジタル化に興味のある人たちの活発な意見交換の場となっています。

「ラズパイ・フィルム・キャプチャー」システムの特徴

RPI Film Capture Super8 Setup
「ラズパイ・フィルム・キャプチャー」スーパー8

・2016年に公開。開発・製作はジョー・ハーマン(Joe Herman)氏
・映写機流用・改造型のプロジェクト。3Dプリンタ由来のパーツは一切使っていません
・対応フォーマットは8ミリと16ミリ
・Python 3+Qt5
・ラズベリーパイ単体でステッピングモーター1台とパイカメラを制御、ネットワーク経由でPCに直接データ転送を行う
・カメラはパイカメラのV1(500万画素)
・リードスイッチを撮影トリガーとして使用
・一つのフレームを複数回露出時間を変えて撮影し、合成(「merge_mertens」アルゴリズム使用)して画質の最適化を行う
・照明は当初ハロゲン電球を使用、後にLED化
・照明の光を拡散させるためのディフューザーを使用
・画質の面からカメラポートではなくビデオポートからの出力を推奨
・デジタル化した動画をVimeoで公開中

【感想】

2016年に公開されたテレシネプロジェクト。2013年、開発者のジョー・ハーマン氏が祖父の残した古いホームムービーを見つけ、動画をデジタル化するため映写機を改造して作り上げたものです。

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m014: Glen Lake Willmotts 1957

デジタル化された動画はブレが少なく色抜けの非常に良いものでした(スクリーンショットは16ミリデジタル化より)。古い映写機を流用することでフィルム制御に成功した例だと思われます。

配線図から分かるように構造は至ってシンプル。ジョー・ハーマン氏曰く「手持ちに映写機さえあれば150ドル程度の予算で組めるはず」とのこと。

別に紹介した「ラズパイ・テレシネ」では一つのフレームを2度、露出時間を変えて撮影し、「enfuse」で合成し画質の最適化を図っていました。ラズパイ・フィルム・キャプチャーも同一フレームを2〜3回、露出時間を変えて(例:6ミリ秒/12ミリ秒/24ミリ秒)撮影し、それを「merge_mertens」アルゴリズムで合成していきます。

導入に際して難易度の高いのが映写機改造。シャッター羽根を取り外すなど序の口で、映写機仕様にあわせてモーターを上手く組みこまなくてはならず映写機の構造そのものへの理解が要求されています。

【参照リンク】
Github
ラズベリーパイ公式ブログの紹介記事