1912年 『ジゴマ後編(ポーリンの殉職とニック・カーターの復讐)』(イポリット・ヴィクトラン・ジャッセ、エクレール社)EYE映画博物館収蔵プリントと日本語版あらすじ

『ジゴマ』 [Zigomar]より

『ジゴマ後編』(EYE映画博物館収蔵プリント)

オランダのEYE映画博物館が保存しているJean Desmetコレクションのひとつで2019年8月に同博物館YouTubeチャンネルで公開されたもの。字幕はオランダ語で最後に幾つかフランス語が混じっていました。フランス公開時の原題は Zigomar contre Nick Carter (ジゴマ対ニック・カーター)。日本公開時の邦題は『ジゴマ後編』

ヴィクトラン・ジャッセによるジゴマ連作としては1911年の『ジゴマ』に次ぐ作品ですが、サジイ小説版には探偵ニック・カーターが登場するエピソードはなく脚本は映画版の完全オリジナル。EYE映画博物館だけではなくフランスのパテ/ジェローム・セイドゥ基金にも35ミリプリントが保存されており、2018年に特集企画の一環として上映された記録が残っています。

シネ・ジュルナル誌1912年3月9日号の広告

シネ・ジュルナル誌では1912年3月9日号(第185号)と16日号(第186号)の2回に分け講評と第1部〜第4部あらすじが掲載されていました。オランダ語字幕では人間関係や展開が追いにくいためシネ・ジュルナル版のあらすじをさらに要約してみました:

物語は前作にも登場していた探偵ポーリンが自宅で爆破テロに遭う場面から始まります。辛くも一命を取り留めたものの重傷を負ったポーリン探偵。その知らせを受けた探偵ニック・カーターはポーリンを見舞いジゴマの捕縛に乗り出していきます。ニックが捜査を始めるとすぐにジゴマの手下たちが階段の踊り場で事故に見せかけた暗殺を謀ります。危難を逃れたカーターは手下たちの一人である女性オルガを味方に付けることに成功しました。(第一部)

ジゴマは部下の一人を自分そっくりに変装させ身代わりにします。ニック・カーターは一旦はジゴマ逮捕に成功するのですが捕まえたのは影武者でした。ジゴマは金庫破り、旅行者の誘拐など悪行の限りを尽くしていきます。探偵はマルセイユでの秘密会議に潜りこむことに成功、しかし変装を見破られ危うく処刑されそうになります。巨石で圧死しかけていたニックを救ったのはオルガでした。(第二部)

トゥーロンの酒場の地下に阿片窟があり、ニック・カーターはジゴマ捕縛のため変装して潜入捜査を行っています。しかしオルガと共に逆に追われる立場となり、自動車の追跡劇の末、再び悪党の手に落ちるのでした。(第三部)

ニック・カーターとオルガは紐で縛られ農家に監禁されていました。火に包まれた農家から脱出するも、退路を阻まれ別行動を余儀なくされます。ニックは無事逃れたものの海に飛びこんだオルガは力尽きジゴマの下に引き渡されるのでした。ジゴマは裏切者に報復すべく女を馬に括りつけ引き回しの刑にします。瀕死のオルガは農夫たちのおかげで一命を取り留めます。ニック・カーターは敵を油断させるため自分が死んだという偽りの死亡広告を出します。ジゴマ一団が祝杯を上げている最中にニックと警官一団が踏みこみ、遂に悪党を逮捕したのでした。(第四部)

この作品には監督ジャッセの映画史観が色濃く反映されています。同氏が1911年に発表した映画論「活動写真監督術考」日本語版の全訳を来週投稿の予定です。

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