帝政ロシア/ソヴィエト初期映画史再訪 [24] & 絵葉書館・ロシア/ソ連/旧ソ連構成国 より
1928年に全ウクライナ寫眞映畫部(VUFKU)で女優デビュー。同社の主力俳優アンブロシー・ブーチマ主演の『夜の馭者』(Ночной извозчик)で娘のカティア役を演じ注目を浴びました。
以前に紹介した『ウクライナ映畫界寫眞帖』(1928年)の女優紹介で一番最初に置かれていたのマリーアさんだったことからも期待の大きさが伺えます。実際、ブーチマ出演作の常連として順調にキャリアを積み重ねていく…と思われたものの翌1929年を最後に出演作が途切れその後の消息が不明となりました。
VUFKUの公式サイトで言及されているように、ミリ・タウト=コルソやポリーナ・スクリア=オターヴァ等他にも複数のウクライナ女優が同じタイミングで俳優業を離脱。VUFKU公式は1929年当時の映画雑誌の記事を引用し、ソ連/モスクワ側から何らかの動き、圧力があってその余波ではなかろうかと匂わせています。一次資料となる当時の記録や関係者の証言が残されている訳ではなく憶測の域に留まるものですが、偶然として片づけるには不自然で確かに「何か」はあったのだろうなと個人的にも考えています。
[Vufku.org]
Mariia Diusimetier
[IMDb]
Maria Dyusimeter
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