帝政ロシア/ソヴィエト初期映画史再訪 [26]
ジョージア(旧グルジア)映画の創始者の一人、アレクサンドル・ツツナヴァ(1881 – 1955)の業績をまとめたジョージア語書籍。サイズは縦14.0×横10.8センチ、ページ数は文章24ページ+やや厚手の光沢紙に印刷されたスチル写真24ページの計48ページ構成。後付けにはソ連邦末期の1979年にトビリシで出版された旨が記載されていました。
ツツナヴァは舞台畑のキャリアの持ち主で、モスクワで演出を学んだ後ジョージアに帰国、トビリシのジョージア演劇協会劇場などで演劇監督を歴任し、自国作家(エグナテ・ニノシヴィリ、ニノ・ナカシゼなど)の作品を舞台化し高い評価を得ていきます。1916~17年にかけてエグナテ・ニノシヴィリ原作の短編『クリスティーネ』(ქრისტინე)を映画化、グルジア民主共和国が誕生したタイミングで公開された経緯もあり、グルジア初の長編劇映画と見なされることの多い一作です。しかしながらグルジア民主共和国は短期間で消滅。ツツナヴァが以後に発表した長編映画は全て併合以後のグルジア国営活動会社によるものでした。
今回入手した書籍は映画監督としての主要作品5作を網羅。
ジョージアの映画産業が産声を上げたばかり、黎明期の作品で粗削りさが目につくものの、自国の抱えている様々な問題を直視しつつアイデンティティを確立していこうとする意志をはっきりと見て取ることが出来ます。




ジョージアは自国の文化・産物のプレゼン能力に長けた国でもあって、定期的に開催されているジョージア映画祭を通じて優れた作品を日本の観衆に届けてくれています。ツツナヴァに関してまとまった紹介はまだ行われていないのですが、比較的近年(2017年)ロシアからジョージアに戻された35ミリフィルム群に『グリアの乱』が含まれており、デジタル修復完了後の2020年代にまず自国でリバイバル上映が始まっています。この流れが日本のジョージア映画祭に反映されてくるのも遠い未来の話ではないのかなと思われます。
[IMDb]
Aleksandre Tsutsunava
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